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――翌朝、澄斗より早くマンションを飛び出し、あたしは学校に向かった。
四階に掛け上がると、化学室と化学準備室の前に【入室禁止】の貼り紙がしてあった。
美術室に行き、室内に入るとハカセと唐沢先輩が二人で話をしていた。
「なーんだ、生きてる。心配して損しちゃった」
『流音ちゃん、俺の身を案じてくれたのか? もしかして、俺のことを好きとか?』
「勘違いしないで下さいよ。昨日ハカセが無謀なことするから、殺されたかと思ったの」
『本橋のせいで、化学室も化学準備室も殺鼠剤や鼠捕り器があちこちに仕掛けてあり、住み辛くなった。馬鹿馬鹿しい。この俺様がみすみす毒を食らうと思っているのか』
「きっと学校の先生が仕掛けたのよ。本橋さんは本気だわ」
『さてと夕刻まで床下で身を隠すとするか。体質改善したとはいえ、太陽の光は体にも肌にも悪いからな』
ハカセは冗談ぽく語り、笑って見せた。
「ハカセ……。十分注意してね」
『あんな小娘にこの俺が殺られるはずはない』
ハカセは笑いながら、マントを翻す。ハカセの姿は鼠へと変身し、美術室の壁にある小さな穴の中へと消えた。
「唐沢先輩。ハカセ大丈夫かな」
『ハカセを殺すには毒は無用だ。ギラギラした太陽の光を全身に浴びせるか、杭を心臓に打ち込むか、銀の弾を打ち込むしかないよ。ハカセは中世からタイムスリップしたヴァンパイアだからね』
「……ハカセが中世からタイムスリップ。そうだよね、鼠捕りにかかるほど、ハカセはバカじゃないよね」
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