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俺はブレザーを脱ぎ捨て、ネクタイを緩める。
流音はキャンバスを立て、画材の準備をしているが気もそぞろだ。
『本橋つみれと、さっき話をした』
「えっ? 本橋さんと!? 本橋さんも唐沢先輩が見えるの!?」
『そのようだな。やはり彼女はただ者ではなさそうだ』
「……あたしが目撃した変死体はやっぱり本橋さん?」
『それも否定出来ないが、証拠はない。彼女の首筋は見えなかった』
彼女の首筋……?
『ジュナのやつ、キスをしようとして失敗したんだよ。本橋に拒否られてやんの』
突然目の前に現れたハカセか顔を突きだした。あたしの唇に触れそうな至近距離だ。
「うわ、わ、わ、」
『ハカセ、調子に乗るな。女子高生にセクハラするなんてどうかしてる。それに俺は本橋にキスなんてしていない』
『ふん。どーだか。壁の人物画にキスしてるお前に言われたくないな』
『あれはスキンシップに過ぎない。挨拶だよ』
唐沢先輩に叱咤され、ハカセはあたしから離れる。
あたしはきっと林檎みたいに真っ赤だ。
ハカセはあたしの髪に触れ謝罪した。
『悪かったな。ジュナの真似をしたまでだ。ジュナがこんな風に迫ったのに、本橋に拒否られたんだぜ』
「……っ、セクハラだよ! 幽霊のくせに最低」
『勘違いするな。俺は本橋の首筋を確かめたかったまで』
「どーなんだか」
『もしも俺達の推測が的中しているとすれば、本橋は新たな獲物を狙っているはずだ』
「……獲物? まさか……澄斗を?」
『空野が新たな獲物なのか、本橋を吸血したヴァンパイアなのか、それはまだわからない』
流音は絵筆を放り出し、再び窓枠にへばりついた。
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