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『本橋がヴァンパイアなら、人の生き血を常に欲するはずだ。次の獲物は……もう定めているはず』
『それは風見流音か?』
『いや、違うな。風見流音が本橋に隙を見せるとは思えない。女に隙を見せる生き物は、男しかいねぇよ。どちらにしろ、この学園には俺達以外にヴァンパイアや悪霊が存在している』
『この学園に異世界ポータルが……』
『そうだ。俺がこの地にタイムスリップしたように。この学校には時空の入り口も霊界の入り口も存在するようだな』
時空の入り口……。
霊界の入り口……。
美術室から校庭を見下ろす。そこには空野に寄り添う本橋の姿があった。
廊下でパタパタと足音がし、ドアが勢いよく開いた。
やはり彼女か。
相変わらず騒々しい女だ。
「あれ? 唐沢先輩。澄斗来ませんでしたか?」
『空野なら校庭だよ』
流音はパタパタと窓際に走り寄り、窓枠に手をかけ、身を乗り出し校庭を見下ろした。
窓から飛び降りる気か。
まだ死なれては困る。
「本橋さんだ……。澄斗のバーカ」
『どうした。心穏やかではなさそうだな。気になるなら校庭に行けばいいだろう』
「あたしは唐沢先輩の人物画を描くために来てるの。澄斗なんて全然気にならないよーだ」
素直じゃないな。
まるで小学生だ。
「唐沢先輩、早く脱いで下さいよ」
俺に指図するとは、いい度胸だな。
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