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「……うざい。だったらなに?」
『やはり、見えているのだな』
「それがどうかしたの? 風見さんも見えてるでしょう。幽霊が見えるなんて、人に知れたら変人扱いだわ。だから、あたしに話し掛けないで」
『君の狙いは何だ?』
「狙い? 一体何のこと? あたしは不幸にも霊感が強いだけ。見たくないものも見えるのよ」
『見たくないもの?』
「あなたみたいな、幽霊のことよ」
『君は美しい。俺の人物画のモデルにならないか?』
本橋はフンと鼻で笑った。
「あたしがあなたの人物画のモデル? あたしの魂を絵画に封じ込めるつもり? お断りだわ」
俺は本橋に顔を近付ける。首筋にかかる黒髪。視線を首筋に移す。
本橋は一瞬たじろぎ、身を交わした。
「いくら美男子でも、あたしは幽霊には興味ないの。失礼」
本橋はツンと鼻先を上に向け、美術室から出て行く。
『色男も台無しだな。ジュナが拒まれるとは』
『ハカセか。いつから見ていた。悪趣味だな』
天井に張り付いていた蝙蝠が舞い降り、俺の肩に止まる。
『ハカセ勘違いするな。彼女の首筋に牙の痕があるか確かめたかっただけだ』
『本当か? キスするつもりだったんじゃねぇの? 本橋は流音よりも美少女だからな』
『偽りの美しさは、本当の美とは言えない』
蝙蝠はパタパタと被膜を鳴らし、天井を舞った。
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