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「逆効果だよ。まじ最悪だし」


 ポンッと白い煙が上がり、鼠がハカセの姿に戻る。


「ねぇハカセ。あの写真の黒い影は本当に唐沢先輩かな?」


『ジュナは写真に写り込まねぇよ』


「じゃあ、ハカセなの?」


『俺もそんなドジじゃねぇ。写真に写り込むのは、悪霊か地縛霊に違いない。流音ちゃんが霊を引き寄せているのかも……』


「あたしが!? 悪い冗談はやめてよ」


 チャイムが鳴り、あたしは慌てて階段を駆け上がり、教室に入る。


 みんなはまだあたしを避けている。


「流音、いつから学校で鼠飼ってんの?」


「あれは化学室に住みついてる鼠。ビスケットをやったらなついたの」


「鼠を勝手に餌付けすんなよな」


 澄斗の嫌味っぽい言葉に口を尖らせる。


 誰かの視線を感じ振り向くと、黒谷君が写真を片手にあたしをじっと見ていた。


 その眼差しに思わずゾッとした。


 写真に写り込むのは、『悪霊か地縛霊……』ハカセの言葉が脳裏を過る。


 そういえば……

 黒谷君が撮った写真には、本橋さんは一枚も写っていなかった……。


 澄斗の傍にいたのに、写真には澄斗しか写っていない。


 本橋さんは……あたしが目撃した変死体の甦りなら、本橋さんを吸血したヴァンパイアがこの学校に潜んでいるはず……。


 太陽の直射日光を怖れない突然変異。


 黒谷君はいつもフード付きのトレーナーを制服の下に着て、外ではフードを被っている。


 まさか……

 黒谷君がヴァンパイア!?

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