64

『神川はヴァンパイアに吸血されたが……何らかの原因で、甦ることは出来なかったとしたら……』


「神川さんが? まさか……。それに本橋さんはみんなにも見えてる。本橋さんが幽霊なら唐沢先輩みたいに人には見えないよ」


『そこだよな。だから彼女は突然変異なんだよ。本橋はみんなに見えている。そして本橋は俺達も見えている。流音ちゃんが俺達が見えるみたいにな。なのに彼女は見えない振りをしている。それ怪しくないか? もしも本橋が地縛霊ではなくヴァンパイアなら、首筋に二つの傷があるはずだ。それと……本橋を吸血したヴァンパイアもこの学園に存在することになる』


「ハカセ以外にヴァンパイアが?」


 背筋がゾッとした。

 この学園に蠢いている何体もの幽霊や、ヴァンパイアがいるなんて……。


 本当にお陀仏中学校だよ。


「あたし……確かめてみる」


『何を?』


「本橋さんの首筋に牙の痕があるかどうか……。そして彼女が本当に鏡に映らないかどうか……」


『流音ちゃんそれは危険だよ。もし彼女がヴァンパイアなら、新たな獲物を探しているはずだ』


 新たな獲物!?

 まさか、澄斗を狙っているの!?


 それとも……

 すでに澄斗は吸血されてしまったとか!?


 男子はカッターシャツの襟で、首筋は見えない。


「唐沢先輩、今朝は人物画のモデルは結構です。放課後お願いします」


 教室を飛び出したあたし。


 澄斗までヴァンパイアだなんて、絶対あり得ないから!


 そんなの、そんなの……

 絶対にイヤだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る