63

「ですよね、ですよね。人間じゃないんだから、映らないよね」


『馬鹿馬鹿しい。何を納得している』


「あの……。鏡に映らない人間っているのかな?」


『人間にそんなヤツはいないよ。鏡に映らないのは、もう死んでいるか、この世のものではないかだ』


「……ですよね、やっぱり勘違いかな」


 目の前にスッとハカセが現れる。蝙蝠が羽を広げるように、黒いマントを翻す。


『よっ、流音ちゃん。それって、転校生のことか?』


「ハカセ、どうしてわかるの?」


『やっぱりな。あの本橋って転校生は、もしかしたら流音ちゃんが見た変死体かもしれないな』


「本橋さんが変死体!? 髪型は確かに似ているけど、顔つきは全然違う。本橋さんは美少女だけど、変死体はおぞましい顔をしてた……」


『それは仮の姿かもしれない。だが本橋がヴァンパイアなら太陽の光には耐えられないはずだ。普通に生活しているなら、ヴァンパイアでないか、俺みたいな突然変異……』


「突然変異……!?」


『俺は化学室で実験中だが、未だに薬品の開発に成功はしていない。彼女は新種のヴァンパイアか、それとも何らかの理由で死者が甦ったか……』


「死者!?」


『ジュナのかけた封印が解け、地縛霊が甦ったのかもしれない』


 唐沢先輩が眉をしかめる。

 あたしには何の話か、さっぱりわからない。


『地縛霊って……?』


『ジュナの前に十人目の女子が現れ、ジュナの呪いが解けることを恐れた地縛霊が、それを阻止しようと蠢いているとしたら、神川の突然死も納得がいく』


 呪いとか……

 地縛霊とか……

 全然、意味わかんない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る