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「本橋さんは澄斗君がタイプなの? 子供の頃の写真もあるのよ。見る?」
「はい。是非見せて下さい」
ママったら、余計なことを。
「ママ、本橋さんはまだ挨拶回りの途中だよ。引き留めたら悪いよ」
「風見さんのお宅で最後だから、大丈夫です」
……何でだよ。
ママはあたしの部屋から幼稚園の卒業アルバムを持ち出し、本橋さんに差し出した。
本橋さんはすっかり寛ぎ、瞳を輝かせている。
あたしは自分の家なのに、居心地が悪い。
「可愛いな、空野君」
確かにね、澄斗は幼稚園の頃はめちゃめちゃ可愛いかった。
あたしより目が大きくて女の子みたいな顔だったから。けど、性格は幼稚園の頃から全然変わらない。
幼稚園の頃から俺様で生意気で、それでいて臆病者。一人でトイレに行けなくて、あたしはいつも付き添いだった。
あたしより小さかった澄斗が、小学校に上がる頃には同じくらいの身長になり、小学校を卒業する頃にはあたしを抜いた。
中学生になった澄斗は、あたしを見下ろすようになり、高校生になった澄斗は俺様を通り越し王様になった。
でも、怖がりでヘタレな部分は幼稚園の頃から変わらない。
「おばさん、アルバムありがとうございました。今日はこれで失礼します。ご馳走さまでした」
本橋さんは大人みたいに挨拶をすると、ママにお辞儀をして帰って行った。
「本当によく出来たお嬢さんね。躾も行き届いてる。流音見習いなさいよ」
「親の出来が違うんじゃないの」
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