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「じゃあ、少しだけお邪魔します」


 嘘でしょう!?


 スリッパの音がし、リビングに本橋さんが入って来た。


「こんにちは。風見さんお邪魔します」


「いらっ……しゃい。本橋さんが挨拶回りしてるの?」


「うん。両親は仕事で世界を飛び回っているから、不在がちなの」


「凄いね。パイロットやキャビンアテンダントなの?」


「まぁ似たようなものね。詳しくは言えないんだ」


「そう。世界を飛び回るなんて、素敵なご職業ね。さぁお座りなさい。珈琲でいいかしら。寂しくなったら、家に夕飯食べにいらっしゃい」


「ママ、そんなの本橋さんに迷惑だよ」


 必死で止めるあたし。

 私が迷惑だってば。


「ありがとうございます。時々お邪魔させていただきます」


 まじで……!?


 可愛い顔をして、意外と図々しいな。


「珈琲と紅茶どちらがいいかしら?」


「ミルクティーでお願いします」


「流音、一人でエクレア食べてないで、本橋さんにもお勧めしなさい。一人っ子のせいか、気が効かなくてごめんなさいね」


「いえ、あたしも一人っ子なので」


「まぁ、そうなの。同じ一人っ子でも随分違うこと」


 ママは嫌みだな。

 いつも他人の家と比べるなって、言ってるのに。


 大好きなエクレアが喉に詰まっちゃうよ。


「さっきお隣にもご挨拶に行ったのよ。風見さんと空野君隣同士だったんだね。いいなぁ」


「ぶっ……」


 思わず吹き出しそうになり、本橋さんに視線を向けた。


 澄斗が隣で得をしたことなんて、今まで一度もない。

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