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「絶対にダメったら、ダメ!」


「意味わかんねぇ」


 黒谷君は眉をしかめ、あたしを睨み付けた。


『ヤツに俺を撮ることは出来ないよ』


 唐沢先輩は余裕の笑みを浮かべている。


 黒谷君がカメラを構えたまま、本橋さんを捕らえた。カメラを向けられた本橋さんが、物凄い剣幕で黒谷君に怒鳴った。


「勝手に撮らないで!」


 ファインダーを覗いていた黒谷君の手が一瞬止まる。


「だから、人は撮らねぇよ。壁撮ってんだよ」


「嘘、今こっちにレンズ向けたでしょう」


「お前、自意識過剰じゃね?」


 黒谷君は絵画にカメラを向け連写した。


 壁の絵画が『うふ』と声を漏らしウインクした。


 何やってんだか。

 撮られる気、満々じゃん。


 黒谷君は美術室の中を一通り撮影すると、廊下に出て化学室の前を撮影し始めた。


 化学室前の廊下は神川さんが亡くなった場所。そして以前、あたしが目撃した変死体のあった場所。


 そう言えば……。

 神川さんと変死体は、同じ場所で倒れていたんだ。


 黒谷君は化学室のドアを開けようとするが、ドアは開かない。


 それもそのはず、ドアが開かないようにハカセが内側から押さえているのがドアの上部にはめ込まれたガラス戸越しに見えた。


「ハ……ハ……」


 思わず名前を呼びそうになり、自分の口を押さえた。

 黒谷君が振り返った。


「何か言った?」


 ぶるぶると首を左右に振る。


「ハクション」


 わざとらしく、くしゃみをして誤解した。


「おかしいな。鍵は掛かってないはずなのに。何で開かないんだろう?」


 ハカセはガラスに顔をひっつけて、ニヤニヤと笑っている。まじでキモイから。


「仕方がない、化学室は外側から撮影しよう」

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