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 唐沢先輩は少し剥れたように、あたしを睨み付けている。


 せっかくの美男子が台無しだよ。


 目で『ちゃんとポーズとって下さい』って訴えると、唐沢先輩は渋々いつものようにポーズをしてくれた。


 美術室のドアが開き、黒谷君が入って来た。手には一眼レフのカメラ。


「黒谷君どうしたの?」


「柿園先生には撮影許可貰ったから。新聞部の伊住に頼まれて来たんだ。室内撮影させてもらうよ」


「撮影?」


 美術室には一年生が三人いるだけ。


「こんなに活気のない部活撮って、学校新聞に掲載するの?」


「部活? まさか、安心して人は撮影しないから」


 人は撮影しないって、どういう意味?


 黒谷君は美術室の中でシャッターを連写する。


 壁や天井、美少女の絵画。そしてカメラのレンズを窓際にいた唐沢先輩に向けた。


 あたしはわざとカメラの前で両手を広げてニカッと笑う。


「何の真似? 風見さんレンズの前に立たないでくれるかな。邪魔だよ」


「流音、そんなに撮られたいのか。黒谷が邪魔だと言ってるだろう。黒谷は美少女しか撮らないんだよ」


「……っ、失礼ね。あたしのどこが不満なのよ。被写体として十分イケてるでしょ」


「あのさ、俺は室内を撮影したいんだよ。心霊写真を撮りたいんだ。生きてる者に興味はねぇ」


「し、し、心霊写真!?」


 それって……。

 唐沢先輩を撮影する気なんだよね!?

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