流音side
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化学室と美術室は隣接している。
従って、美術部の二年生部員も怖がって部活に出て来なくなったが、一年生の風見流音と空野澄斗、転入生の本橋つみれは怖がる風でもなく、美術室で画を描いている。
「本橋さんは怖くないの?」
「あたし? 神川さんは心不全だよね。幽霊でも見たのかな。それでショック死? もしかして、この美術室に棲みついてる幽霊を見たのかも」
本橋さんはあたしに視線を向けた。棲みつくなんて、唐沢先輩に対して失礼だな。
「美術室に幽霊なんていないよ。いるなら逢ってみたいね」
あたしの言葉を聞き、唐沢先輩が自分を指差した。
「風見さんは幽霊ともう逢ってるんじゃないの?」
「……えっ?」
「……まさか、逢ってないよ」
「そうかな。その人物画、誰かをモデルにして描いているみたいだし。いつも一人でブツブツ言ってるし」
的を得ているだけに、答えられず困っているあたしに、澄斗が助け船を出す。
「流音が描いてるのは、ちっちゃいおっさんだろう」
「おっさん?」
『おっさん!?』
唐沢先輩と本橋さんの声が重なる。
『その絵画は、老け顔なのか。おじさんを描いていたのか』
唐沢先輩は完全に怒っている。
「違うよ。澄斗変なこと言わないで」
「風の妖精とかいうからだよ。コイツちっちゃいおっさん見えるみたいだからさ」
澄斗の言葉に、本橋さんはクスクスと笑った。
「小人の妖精が見えるんだ。風見さんってやっぱり面白いね」
唐沢先輩は小人なんかじゃない。澄斗より背も高いし、顔だってイケメンだ。
じっと見つめられたら、ドキッとするんだから。
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