【6】心霊写真と侵霊写真

ジュナside

49

 ――美術部の部活。


 午後五時半、部員がぞろぞろと退室し、窓の外を眺めていると再びドアが開いた。


『風見流音、忘れ物か?』


 振り向くと女子生徒と目が合う。そこにはあの新入部員が立っていた。


『君、俺が見えているのか?』


「いけない。忘れ物、忘れ物」


 彼女は素知らぬ顔で、机の上に置いたままになっていた携帯電話を掴んだ。


『待て、俺が見えているのだろう』


 壁に掛かる絵画が口々に喋る。


『ジュナ様、この女にジュナ様は見えないわ。だって美少女にはほど遠いでしょう。どこにでもいる女子中学生よ』


『でも風見流音が見えるのよ。彼女に見えても不思議はないわ。風見流音より可愛いもの』


『この女子中学生が見えない振りをしてるって言うの? 何のために?』


 絵画の会話は聞こえないのか、本橋つみれは何事もなかったように、美術室を出てドアを閉めた。


 俺の勘違いかな。


『いや、勘違いではなさそうだ』


『ハカセ、いつからそこにいた』


『蝙蝠になり、ずっと壁に張り付いていたよ。一人を除き、誰も気付かなかったけどな』


『一人とは、風見流音か』


『いや、違う。今時の女子生徒だ』


『彼女が……蝙蝠のお前に気付いてたというのか? まさか』


『多分気付いていたはず。何度も目が合ったからな。彼女は人間じゃない。ジュナもそれは感じてるんだろう』


『彼女には妖気を感じる。俺の声を無視しているが、何度も目が合った』


『やっぱりな。今朝、風見流音の言ったことは本当だったのかもしれないな』


『今朝?』


『死体が消えた話だ』


『まさか、彼女が? その死体だと?』


 俺は半信半疑だった。

 彼女も風見流音同様選ばれし女子。


 だから俺が見えると思っていたが、ハカセも妖気を感じていたなんて。

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