流音side

47

「風見さん、一人言煩いよ。集中出来ないから、静かにしてくれない」


「夏崎先輩すみません」


「あのさ、めっちゃキモいから。風見さんみたいな人がいるから、美術室に幽霊がいるとか、壁の絵画に美少女の魂が封じ込められてるとか、悪い噂が立って美術部員が減ってくの」


 だって本当なんだから、しょうがないでしょう。


「大体、この美術室に美男子の幽霊がいるはずないのよ」


 夏崎先輩は唐沢先輩がいるとは知らず、窓際に近付き唐沢先輩の膝の上に座った。


「わ、わ、わぁ」


「風見さん、何よ煩いわね」


 夏崎先輩は美少女ではないが、プロポーションは抜群。唐沢先輩はあたしの前で、夏崎先輩を背後から抱き締めた。


 幽霊のセクハラだ。

 あたしの目前で、恥じらいもなく夏崎先輩の頬をツンツンしている。


 警察官がここにいたら、即逮捕だよ。


「やだ、ムズムズする。虫かしら」


 夏崎先輩は自分の手で、右頬をパチンと叩いた。虫と言われた唐沢先輩はあたしを見ながら、もう一度夏崎先輩の頬をツンツンした。


「夏崎先輩、害虫がいますよ。毒虫に気をつけて」


「きゃあ、やだ。あなたが窓開けてるからよ」


 夏崎先輩は唐沢先輩の膝の上から飛び降り、席に戻る。


「セクハラ幽霊、害虫以下だよね」


『何か言った?』


「そうやって女子生徒を触ってるの? 見えないからって厭らしい。サイテーだよ」


『向こうから俺の膝の上に座ったんだよ。俺の胸に密着した。それってセクハラじゃないのか? 俺は不快だったけどな』


「……っ」


 口の減らない幽霊だ。

 夏崎先輩の方が、不快だよ。

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