ジュナside
46
風見流音の要望に応えて、窓際に腰掛け朝と同じポーズをとる。
ネクタイを緩めシャツを脱ぎ捨てると、誰かの視線を感じた。
風見流音でも壁にかかる絵画の美少女でもない。
誰かに見られている視線……。
その視線を手繰り寄せると、ある一人の女子生徒に辿り着いた。
肩すれすれのおかっぱ頭、日本人形みたいな髪。黒髪で髪質はストレート。黒目がちの瞳は大きく魅力的。
だが……
俺には彼女の瞳に、生気を感じなかった。人間が持つ生気の代わりに、彼女には得たいの知れぬ妖気を感じた。
彼女はすぐに視線を背けた。その口元には笑みが浮かんでいる。
彼女は確かに俺を見ていた。
俺が見えているのか?
なぜ、騒がない。
なぜ、恐怖に怯えた顔をしない。
なぜ……。
「唐沢先輩、どうしたの?」
『いや、何でもない』
「朝と同じ表情してくれないと困りますよ」
『どんな表情だよ。それより早く描け。一体何日俺を裸にするつもりだ』
「……っ。そんなに簡単に描けませんよ。コンクールに出すんだから、完璧に仕上げたいの。澄斗に負けられないから」
『澄斗? 空野澄斗か?』
「転校生の女子に、鼻の下を伸ばしてデレデレしてるだらしないヤツに、負けてたまるもんですか」
『なるほど、君は二人にヤキモチを妬いているんだな』
俺は空野を指差す。
空野の隣にいた女子が、俺を見て笑った。
『俺が……見えているのか?』
彼女は何も答えない。
「唐沢先輩、見えてますよー。こっち向いて」
彼女の代わりに流音が答えた。
彼女と視線が重なったのは、偶然……?
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