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 可愛い顔をして、意外と積極的なんだ。


 澄斗もデレッとしちゃって。暑さでドロドロに溶けたアイスクリームみたい。


 あたし、何で腹が立つんだろう。


 澄斗を睨み付けていると、誰かの視線を感じた。


 ――それは、黒谷君の視線だった。


 でも、見ているのはあたしじゃない。


 黒谷君が見ているのは……

 本橋さんだ。


 黒谷君、本橋さんみたいな女子がタイプなのかな。ちょっと危険なイメージだけど、女子の趣味は意外と普通だな。


 男って可愛い子を見ると、みんなだらしない。


 本橋さんが美術部に入部したら、唐沢先輩も彼女に心を奪われるのかな!?


 そんなの困るよ。


 ◇


 ―放課後―


 あたしは一人で美術室に向かう。千秋と小春はすでに幽霊部員と化し、今日もカラオケらしい。


 二人はカラオケ同好会を作りたいなんて、盛り上がってる。


 でも美術には全く興味のない二人。仮入部に誘ったのはあたしだし、それも致し方無い。


 ――美術室に行くと、すでに澄斗が来ていた。澄斗の隣には、本橋つみれ。


 上級生部員はすでにキャンバスに色を塗っている。


『誰だよ、彼女見かけない顔だな』


「転校生ですよ、男子にベタベタして嫌な感じですよね」


『そうか? 可愛いけどな』


「は?」


 男って、みんな同じ。

 幽霊になっても、男は男なんだ。


 美男子で、妖精みたいに爽やかなのに、心根は厭らしいんだから。


『何だよ、その目』


「別に、どんなに色目使っても、唐沢先輩のこと彼女には見えないんだからね」


『そうだよな。どうして君に見えて他の女子に見えないのか不思議だ。心身ともに清らかな美少女は、この学園に沢山いるのに』


「それ、どういう意味ですか? 失礼ね。そんなことより唐沢先輩早く脱いで下さい」


『また俺を脱がせるのか? よほど俺の裸体が見たいらしいな』


「ち、違いますよ。人物画のモデルだから仕方がないの」


 アタフタしているあたしの目の前で、唐沢先輩がパサッと上着を脱ぐ。


 ふと、誰かの視線を感じた。誰かがあたしを見ている。


 振り向くと、本橋さんだった。だけど彼女が見ていたのは、あたしじゃない。


 ――唐沢先輩!?


 まさか……。

 本橋さんに、唐沢先輩が見えてるの!?

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