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美術室を飛び出したあたしは、女子が倒れていた場所を避け、窓にへばりつきながら歩く。
『流音、窓に張り付いてまるでヤモリのようだな。何やってんだ?』
化学室のドアが開き、ハカセがあたしを見て笑ってる。
「うわっ、ハカセいたの? さっき唐沢先輩が呼んだのに、なぜ来なかったの?」
『ジュナが俺を? まだ寝てたからな』
「なんだ。寝過ごしたの?」
『寝過ごしたのではない。俺達ヴァンパイアは本来なら太陽が昇っている間は棺で過ごすのが掟。オリジナルドリンクのせいか体質改善されて、日中でも日陰なら過ごせるようになったんだよ。だが昔の習性で朝は弱いんだ』
「ふーん。ハカセって美肌主義なの? 肌を日に焼かないんだ?」
『お前はヴァンパイアのことを何も知らないのか? 俺は太陽の光に当たると日焼けどころか、丸焼けだよ』
「あはは、ハカセの丸焼け? ウケる」
『勝手にウケるな』
「あのね、ハカセ。今朝あたし見たの。女子が化学室の前に倒れてたの。まさか……ハカセが殺してないよね?」
『は? この俺が? 殺すって?』
「首に牙のあとがあったんだよ」
『何だ、俺がこの学校の女子を吸血して殺したと思ってるのか? 俺は女子生徒を襲ったりしねぇよ』
「ハカセじゃないの?」
ハカセはヘラヘラ笑ってる。
ハカセじゃないなら、誰なのよ?
『本当に首に牙のあとがあったのか?』
「唐沢先輩はあたしの勘違いだって言ったけど、あの子は絶対に死んでいた。でもね、首がくるくる回って死体が消えたんだよ」
『は? 死体が消えた? 生き返ったというのか?』
「わからないけど、遺棄現場から消えたんだ」
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