【5】変死体と変姿体

流音side

40

 翌日、唐沢先輩の人物画を描くために、誰よりも早く登校する。


 正門を走り抜け、校庭に入ると何かがいつもと異なることに気付いた。


 上空を見上げる。

 昨夜、暗黒の世界に包まれたが、今朝は青空が広がり、いつもと変わらない。


 なのに、なぜだろう。

 この違和感……。


 校庭を見渡し、ふと、あることに気付いた。


 桜だ……。

 一本の桜が花だけではなく、葉も全て落ちている。


 足元に落ちた葉は、焼け焦げたように黒くなっている。


 そして枝も樹も……まるで落雷したみたいに、無残な姿となっている。


 一夜にして枯れてしまったの? 不気味だな。


 構内に入り、パタパタと階段を上る。


 四階の廊下、化学準備室の前で女子生徒が倒れていた。スカートが捲れ下着が見えそうで見えない。


 まさか……。

 実験を目撃されたハカセが逆上して……!?


 ガブッと……!?


 ゆっくりと女子生徒に近付く。


 黒髪で日本人形のような髪型。


 見たことない顔だ。

 でもこの学校の制服を着ているってことは、この学校の生徒だよね。


 何年生なんだろう。


 乱れた髪、首筋が見えた。

 えぐられたような深い傷。首に穴が開いている。


 しかも……

 二ヶ所。


 まさか……ね?

 ハカセは人間を吸血していないと言った。


 でも……

 彼女は顔面蒼白……。


 血の気がない。


 思わず手首に触れるが、脈もない……。


 突然、彼女の首がコキッと動いた。まるで絡繰り人形のように首がぐるりと回転した。


「きゃああー!!」


 さすがのあたしも叫び声を上げ、一目散に美術室に逃げ込んだ。

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