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俺に呪いをかけた悪霊から、少女達の行く末は聞かされていない。
俺が絵画に封じ込めた少女達は、魂を抜き取られても誰一人怨み言を言わなかった。
俺が呪いを解き甦るなら、彼女達も甦ることが出来るのだろうか。もしも五十年前にタイムスリップできたなら、彼女達はまだ生きているはずだ。
九人目の奈美を封じ込めるまでは、安易に自分のことだけを考えていた。
奈美の魂を封じ込めたあと、生徒が美術室に持ち込んだ新聞記事を読み愕然とした。
それはこの学校に纏わる怪奇事件の記事だった。
この学校で相次ぐ美少女の【突然死】、そして俺の【失踪】。
俺は【失踪】だが、彼女達は【突然死】と書かれていた。即ち彼女達の体はすでに火葬され遺骨は埋葬されているということになる。
彼女達が甦ることは、もう二度とないとしたら……。
俺は呪いを解くことに必死となり、少女達を次々と殺めていたことになる。
俺は殺人鬼。
ヴァンパイアであるハカセは、吸血後に同族として新たな命を与えることが出来るのに、俺は少女達を甦らせることも出来ない。
『最低だな』
『は? 俺のどこが最低なんだよ。品行方正なヴァンパイアだぜ』
夜空に浮かぶ月が、暗黒の闇に包まれる。冷たい風がザワザワと木々を揺らした。
落雷もないのに街中の電気も、車のライトも一瞬にして消えた。暗闇でハカセの赤い瞳だけが光っている。
『不吉な夜だぜ。胸騒ぎがする』
『俺もだ……』
数秒後、何事もなかったかのように街に灯りが戻った。
単なる停電?
そんなはずはない。
――不吉な気配を感じた。
奴らが……闇夜に動きだす。
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