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「風見さん! その鼠あなたの鼠なの!?」
「やだ、柿園先生違いますよ。この学校に棲み着いている鼠みたいです。でもそんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。噛みついたりしません。柿園先生、あたし放課後毎日美術室を使用するので、絵画コンクールまで許可して下さいね」
柿園先生は机から降り、乱れたスカートの裾を直し、パンプスを履く。
「部活以外は、指導出来ないけどいいの?」
「その方が助かります」
「は?」
だって、唐沢先輩との会話を聞かれたくないから。
「柿園先生の手を煩わせることはありません。今日はもう帰ります」
「そう。その鼠、外に捨ててちょうだい。薄気味悪いわ、鼠は不潔なのよ。よく触れるわね」
柿園先生が美術室を出ると、鼠はあたしの手から飛び降りマントの下に潜り込み、あっというまにハカセの姿に戻った。
『お前、よくもこの俺様を水入れに閉じ込めたな』
「だって本当に鼠に化けるなんて思わなかったから、ちょっと驚いただけ」
『嘘を吐け。俺を閉じ込め、楽しんでいたくせに』
「そんなことないよ。ていうか……ハカセさんは本物なんだね」
『俺は変装マニアではない。ヴァンパイアだと何度も言ってるだろう』
ハカセはパタパタとマントを翻す。
『ハカセ、埃が立つからやめろ』
『ジュナ、埃が立つとはなんだ。お前こそ早く服を着ろ。いつまでも裸体を晒すな。噛みつきたくなるだろう』
『おお怖い。俺は好きで裸になった訳じゃないよ。彼女の希望だ』
「……っ、あたし希望してませんけど」
唐沢先輩の裸体にあたしはドキドキしてる。唐沢先輩は脱いだシャツに袖を通し、胸元のボタンを止めた。
ああ良かった。
でも……ちょっと残念。
もっと描きたかったな。
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