27

 ヴァンパイアは人の生き血を吸うんだよ。血を吸うなんて、ブンブン飛んでる蚊じゃあるまいし。


 もしかして、鋭い牙が……あるのかな?


「ニッてして」


「ニッ? 流音何言ってんの?」


 千秋はあたしにニッて笑って、白い歯を見せる。


 あたしは目でハカセに合図する。


『俺? 俺に笑えって?』


 ハカセは千秋の隣でニッて笑った。あたしはハカセの口を覗き込む。


『お前は歯科衛生士か? 虫歯ならねぇよ』


 八重歯ぽいのが、見えたが吸血するための牙かどうかわからない。


『俺は今禁血中だ。心配するな。食い付いたりしねえ』


 禁酒、禁煙は耳にすることはあるが、禁ケツって……なに?

 ハカセはお尻が好きなの?


「B組の真波、襲ってないよね」


「多分もうヤられてるよ」


 ハカセに質問したのに、千秋の返答。ハカセがここにいることを、知らないのだ。


『真波? 誰だそいつ』


 ヤバい、見られていたことに気付いてなかったの!?


 あたしが真波を窮地に陥れてしまった。


「噂だよ。化学室の実験を目撃した女子を、ヴァンパイアは襲うんだよね」


「そうそう。ヴァンパイアは極悪非道なんだよ。逃げまどう女子を襲ってガブッと噛み付き血をズズズッて吸うんだから」


『あほくさ。人間の妄想はくだらねぇな。吸血するなら、わざわざ化学室で実験しねぇよ。俺は血に代わる薬品を開発中なんだよ。俺が人間なら医学界に朗報をもたらす発明だ』


 ……ってことは、やっぱりヴァンパイア!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る