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「えっ?」


 振り向くとそこにはハカセがいた。黒いマントを着け、変装したままだ。


「ハカセさん!?」


「ハカセ? 何言ってるの流音。博士なんてこの学校にはいないよ。シーッ、ヴァンパイアに気付かれちゃうよ」


「千秋、小春、ハカセなら……」


 ハカセが人差し指でチョンチョンと、あたしの肩を叩く。


『だから言っただろ。俺クラスになると凡人には見えないんだよ。君は凡人にはない優れた霊能力があるみたいだからな。特別な人物なんだよ』


「……う……そ」


 あたしは目をパチクリさせ、ハカセをマジマジと見る。


「流音、つまんないな。ヴァパイアには残念ながら今日は逢えなかったみたい。次は美術室の幽霊探しに行こう」


「……ぁっ、うん」


 あたしは千秋や小春にからかわれているのだろうか。


 それとも……

 本当に……見えてないの?


 だとしたら……

 ハカセは本物のヴァンパイア!?


 文化系の部活は毎日ではない。美術室に集まるのは、部員の自由意思。


 あたしは唐沢先輩と約束しているから、放課後美術室に行くつもりだったけど、千秋や小春が一緒なのは予定外だ。


 美術室に向かうとあたしの後ろからハカセが着いてくる。


 ハカセは黒いマントを靡かせながら歩いている。


 確かにこの風貌は学校の中では異質だ。


 演劇部の衣装でないなら尚更、こんな格好で廊下を歩いていたら、奇人変人。


 誰もが振り返るはずだけど、誰一人ハカセを見る者はいない。


 ということは……。


 背筋がゾクッとした。


 ホラー映画や怖い話しは苦手じゃない。寧ろ面白がるタイプだけど、まるで羽をむしられた鶏みたいに全身に鳥肌が立った。

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