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「凄いんだよ。黒谷君、中学生フォトコンクールで金賞受賞したんだよね」


 小春の情報に、思わず耳を疑う。


 なに?

 中学生フォトコンクール?


 賞というものに目のないあたしは、黒谷君が金賞と聞き目を丸くする。


 この死神、ただ者ではないかも。


 ――この日を境に、あたし達は昼休みになると、何故か六人で昼御飯を食べるようになった。


 黒谷君だけはどうしても好きになれないが、澄斗と伊住君の友達だから仕方がない。


 スクープが欲しい伊住君。今、彼の一番の興味は化学室のヴァンパイア。


 あのハカセが本物のヴァンパイアだとは、到底思えない。


 だとしたら……

 本物のヴァンパイアが化学室にいる。


 ヴァンパイアは、銀の杭や十字架、ニンニクが苦手なんだよね?


 直射日光に当たると灰になるとか、鼠や蝙蝠に変身するとか、小説や映画に出てくるヴァンパイアがこの学校にいるなら、あたしも見てみたいものだ。


 ◇


 放課後、美術室に行く前にあたしと千秋と小春は化学室に立ち寄る。


「千秋、本当にいるの?」


「滅多に出没しないみたいだけど。目撃者いるし」


「それガセネタじゃん」


 恐る恐る化学室のドアに耳を寄せ、室内の様子を伺う。


「千秋無音だね。ポコポコなんて言ってない。もし実験を見たら血を抜かれるんでしょう」


「うん」


 必死な千秋と小春。

 あたしはハカセが本物かどうか、確かめたいだけ。


『君、何してるの?』


「化学室のヴァンパイア、見に来たの」


『下劣なヴァンパイアは世に蔓延ってるけど、俺みたいなキングクラスになると、凡人には見えないよ』

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