24

「風見さんって面白いね。それに可愛い」


 優等生のイケメン眼鏡男子に、『可愛い』と言われ思わず舞い上がる。


「やだ、可愛いだなんて。伊住君ったらぁ」


 思わずデレッとするあたしに、澄斗が憎まれ口を叩く。


「あほ、それは社交辞令みたいなもんだろ」


「……っ、澄斗は可愛くないな」


「お前がガラにもなく、舞い上がってるから、真実を教えてやったんだよ」


「酷い、サイテー」


 澄斗と口喧嘩していると、伊住君が優しい眼差しを向ける。


「空野、僕は風見さんが本当に可愛いと思ったから口にしたまで。僕は記事も言葉も嘘は吐かない」


 優等生らしい言葉に、黒谷君がフンと鼻を鳴らした。


 感じ悪い。一番嫌いなタイプ。どうして伊住君も澄斗も黒谷君と一緒にいるのか、わかんないよ。


「黒谷君、何笑ってんの?」


「笑ってねぇよ」


「あたしを見て笑ってんじゃん」


「くだらねぇ。自意識過剰の女子は嫌いだ」


 黒谷君はコーラをごくごくと飲み干す。ヤンキーのくせにフードから覗く青白い肌。


 腕も澄斗より細い。


 まるで……死神みたい。

 美術室の美男子幽霊よりも、化学室のヴァンパイアよりも、よっぽど不気味。


 ふと、ホラー映画に登場する薄気味悪い死神を思い浮かべる。


 斧を持っていたら完璧だ。


 脳内のキャンパスで黒谷君をモデルに死神を描き、ささやかな仕返しをする。


「新聞部が掲載する写真は、すべて黒谷が撮ったものなんだ」


 えっ? マジで?

 成る程、やっと二人の接点が見えてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る