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「化学室に何かいたの? 例の学校の怪談?」


 伊住君がすぐに食いついた。さすが新聞部だ。


「そうそう。化学室のヴァンパイア、人間を吸血せず、薬品を混ぜ合わせた液体を血の代わりに飲んでるって、研究者気取りのヴァンパイア」


「へぇ、人の生き血を吸わないヴァンパイア? 紳士的だね、強いていうなら吸血しない騎士ってとこかな。吸血騎か、キャッチフレーズもネタになりそうだ」


 容姿はまるでハカセに似ている。黒いマント、てっきり演劇部だと思ってた。


 まさかね。

 ハカセが本物のヴァンパイアだなんて、ナイナイ。そんな迫力なかったよ。


「伊住君、ネタなら美術室の最強美男子幽霊は?」


「ジュナのこと? アレはもう古い。誰も見たことないし、壁の人物画も本当にジュナが描いたものかどうか怪しいって噂だし、呪いとかも今の時代胡散臭い。完全に作り話だよ」


 伊住君はジュナのことはすでに調査済みのようだった。


「大体、あの人物画に美少女の魂が封じ込められているとは思えないしね」


「もし本当だったら?」


 千秋と伊住君の話しに、思わず口を挟む。


「もし本当なら、そんな薄気味悪い人物画は焼却すればいい」


「焼却? そんなことしたら、みんな焼け死んじゃうよ」


「みんな? 美少女のこと? もし噂が本当なら、もうとっくに死んでるよ」


 彼女達の話し声を聞いているあたし。あの声が本物なら彼女達の魂は今も肖像画の中で生きている。


 ……いや、やっぱり死んでるのかな?


 でも焼却するのは、彼女達を焼き殺すようで残酷でならない。

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