【3】吸血鬼と休血騎

流音side

21

 教室に飛び込むと、すでに担任がホームルームを行っていた。


「先生、遅れてすみません」


「風見さん、早く座りなさい」


「はい」


 教室の一番後ろ。

 隣の席は澄斗。


「お前何やってんの? 三堀や上田と一緒じゃなかったのか?」


 幽霊やホラー映画は怖いくせに、普段は威張りくさった俺様。


「今朝は一緒じゃなかったよ。絵画のモデルと交渉してたんだ」


「モデル?」


「うん。最強のモデル見つけたの。美術室の妖精」


「妖精? ちっちゃいオッサン見たとか? お前アタマ大丈夫?」


「確かに美男子の妖精は見たけどさ。もしかしてあたしのことバカにしてる?」


「お前こそ、俺のこといつもバカにしてるだろう」


 なんだ、気付いてたんだ。

 俺様狼の皮を被ったチキン。みんなを欺けても、あたしにはわかってる。


「美術室の怪談なら俺でも知ってるよ。俺が美術室に幽霊なんていないことを証明してみせる」


 そう宣言した澄斗の目は、いつになく気迫に満ちていた。


「無理しない方がいいよ」


 だって、あの怪談話は事実だし。

 ホラー映画が大好きなあたしが、仰天しているんだから。


 ペラペラ喋る人物画や、唐沢先輩が実は美男子幽霊のジュナだったこと。ヴァンパイアになりきっている、演劇部のハカセ。中学生にしてはかなり老けているけど。


 ていうか、あれはドッキリカメラだったりして?

 唐沢先輩が、文化祭の出し物として盗撮していたのかも。


 もしも唐沢先輩とハカセがもうこの世に存在しないとしたら……。


 あたしも澄斗もきっと腰を抜かすだろう。

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