18

 都合が悪くなった俺は、流音に背を向け窓の外に視線を向ける。


『ジュナ様をモデルだなんて、図々しいにも程がありますわ』


「ひゃっ、誰!?」


『私? 私は晶子。ジュナ様の一番のファン』


「ジュナ様? や、やっぱり唐沢先輩が……。美術室のゆ、ゆ、ゆーれい!?」


『幽霊? 俺は唐沢樹那からさわじゅな、確かに美術室にいるが幽霊とは心外だな。壁の人物画は俺が描いたものだ。彼女達の魂はこの絵画の中で今も生きている。永遠の美を与えたのは俺だ。俺は絵を描くが誰のモデルにもならない。従ってこの俺が君のモデルになるなど、もってのほか』


 俺は流音にジリジリとにじり寄る。俺の正体がバレた今、もう隠すことは何もない。


 俺が欲しいのは、流音の魂。やっと巡り会えた十人目の少女。


 流音の人物画を完成し魂を封じ込めれば、俺の呪いは解ける。


『それよりも、俺に君を描かせろ』


「……っ、ま、待って。本当にあなたが美術室のジュナなの? どうしてあたしにしか見えないの? どうしてあたしと話が出来るの?」


『それはこちらが聞きたい。君は人物画の美少女のように死期は迫っていない。余命はたっぷりあるからな。強いて言えば君は気付いてないが、人よりも霊感が強いのだろう』


「あたしに霊感が? まさか……。今までオバケなんて見たことないよ」


『オバケ? 随分低レベルな言い方だな』


 天井を見上げ、『フゥー』と息を吐くと、室内に季節外れの雪が舞う。


「わ、わ。だって、いきなり幽霊だとか。霊感とか言われても、信じられるわけないよ」


『目の前で見ていることを信じられないのか。俺も君がなぜ俺が見えたり、話をしたり出来るのか納得はいかないけどな』


「でしょう」


 流音はあっけらかんと答える。俺に対する恐怖心は全くないようだ。


『何故なら、今まで俺が見えた女子生徒は、全員余命僅かで、学校でもトップレベルの美少女だったからな』

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