15

『悪霊?』


「だって女子の魂を絵画の中に封じ込め、殺しちゃうんだよね」


『完全に抹殺してはいない。肉体は滅びても魂は現世に存在する。彼女たちに永遠の美と永遠の命を与えたまで。余命の短かかった彼女たちに感謝されることはあっても、怨まれることはない』


「唐沢先輩、ジュナのこと詳しいですね。それに殺された女子の気持ちもよくわかりますね。それも怪談話ですか? 永遠の美と永遠の命だなんて、ヴァンパイアみたい」


 壁に掛かった美少女の人物画に思わず視線を向ける。

 永遠の命だなんて、バカみたい。


 唐沢先輩、そんな怪談話を信じてるの?


 ――その時、美少女の口元が少し動いた気がした。


 まさかね……。

 気のせいに決まってる。


 あたしは何度もパチパチと瞬きをし、目を凝らしてもう一度絵画に見入る。


 ところが、絵画の美少女はビクともしない。


 ……だよね、絵画が動くはずはない。


 人物画に背を向けると、吐き捨てるような小声がした。


『バッカみたい』


「は?」


 振り返るとそこには、美少女の人物画。


「千秋、何か言った?」


「あたしは言ってないよ。さっきから一人でぶつぶつ言ってるのは流音でしょう。大丈夫?」


 千秋でも小春でもないなら、一体誰なの。


『まだわかんないの? よっぽど頭が悪いみたいね』


 確かに聞こえてる。

 あたしの悪口。


 あたしの背後にはやはり誰もいない。


 ――まさか……。

 あの人物画の美少女が?


 そんな……!?

 嘘でしょう!?


 ホラー映画じゃあるまいし。

 現実世界で、こんなことは有り得ないよ。


 唐沢先輩に視線を向けた。

 唐沢先輩は爽やかな笑みを浮かべている。


 もしかして、唐沢先輩には女子の声が聞こえてるの?

 千秋や小春には聞こえてないのに?

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