【2】怨霊と恩霊
流音side
12
美術部が廃部寸前の同好会になっていると知り、あたしは奮起する。
美術にあまり興味のない千秋と小春を誘い、三人で仮入部することになった。
あたしは入部する気満々だが、千秋と小春は美術室の美男子幽霊の存在を立証するための仮入部だと息巻いている。
あたしにはどうだっていい話。
そんなことより、唐沢先輩に人物画のモデルになってもらうことの方が大事なんだから。
美術同好会の顧問は新米教師。
経験もなく、頼りなさそうな女性教師。
「柿園先生、これで同好会から美術部に返り咲きですね」
「新入生が仮入部ではなく、正式入部になれば美術部として申請するわ。ただ……美術室には色々と噂があるみたいで。私もまだ半信半疑だから、何とも言えないけど。トラブルは避けたいの、だからみんな楽しくやりましょう」
色々と噂って、千秋の言ってた幽霊かな。
学校に幽霊だなんて、作り話もいいとこだ。
幽霊部員だと、みんなから相手にされない部員はいるけど。
美男子な唐沢先輩をシカトするなんて、二年生の女子はどうかしてる。
あたしなんて、今すぐにでも唐沢先輩をキャンパスに描きたいくらいだ。
柿園先生からスケッチブックを渡され、一年生は鉛筆でフルーツのデッサンを始める。
あたしは一番後ろに座り、デッサンではなく唐沢先輩に筆談をする。
【唐沢先輩、二人きりで話があります。】
『俺に? いいけど。明日の朝でいいかな。朝なら美術室に誰もいないし』
唐沢先輩に「シーッ」て指を立て、鉛筆を動かす。
【はい。了解です。】
唐沢先輩から了承をもらい、あたしはデッサンを続ける。
唐沢先輩は美術室の一番後ろで、腕組みをしたままじっとあたしを見つめている。
千秋と小春は二年生に幽霊のことを然り気無く聞いていた。
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