11
『君、俺に話し掛けない方がいいよ。君もシカトされるから』
だって俺は、正真正銘の幽霊部員だから。
「シカトなんて怖くありません。でも唐沢先輩の立場がさらに悪くなるのなら、暫くは黙っています」
『それが得策だな』
「やだ、流音。何一人でぶつぶつ言ってるのよ」
「一人で? 千秋まで何言ってるの?」
「何って?」
「千秋まで虐めに加担するの?」
「は? 虐め? それより
「あたしが? まさか。こんなヤツ、誘わないよ」
イケメンだけど壁の人物画をチラッと見て、背を向けた。絵画の美少女と目を合わせないようにしている。
あの美少女たちに興味がないのか?
まさか怖いとか?
美少女たちは、美男子の空野に興味津々だけどな。
彼女は空野の背後にそーっと回り、肩をポンッと叩いた。
「ひゃ、ひゃ、ひゃー!!」
空野は腰を抜かし、床にへたり込む。
「相変わらずだね、澄斗は。あの噂が怖いの? 怖いくせに美術部に入部したの?」
「噂話なんて怖くないさ。学校の怪談なんて誰かの作り話だ。バ、バカにするな。俺は鞄に躓いただけだ」
空野は立ち上がり、教室の隅々を見渡す。俺は空野の目の前に立っているが、どうやら俺の姿は見えないらしい。
『フゥー』と息を吹き掛けると、空野は亀のように首を引っ込めた。
「やめろよ、流音。ふざけんな」
彼女を名前で呼ぶとは、二人の関係は親密なようだ。
何故か、面白くない。
俺のターゲットに男の影があるとは。
――『心身ともに清らかな美少女』
俺の理想が砂山のようにパラパラと崩れ落ちる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます