199407⑤
河原と熱い抱擁を交わした翌日、宮原は鹿児島白山ホテルで記者会見を開いた。
冒頭「私、宮原優太はシャルケを退団しました」という発言から始まった記者会見は重大発表の目白押しのような様相を見せた。
まずシャルケ退団の理由を「自分が海外で経験したものを鹿児島、日本に還元したい」と説明した宮原は、そのために「鹿児島にNクラブを作り、鹿児島の人々に誇りと気概、連帯感を持ってもらい、鹿児島全体に活気を漲らせ、鹿児島を変えていきたい」と語った。
その後の具体的な説明を聞いたに記者達は、「ここまで話が進んでいるとは……」と驚くこととなる。
クラブ名は『SC鹿児島』。チームスローガンは『鹿児島の象徴たれ』。地域密着、地域振興を目的とし、クラブを通じて鹿児島から世界への橋渡し、世界から鹿児島への橋渡しを行っていく。
ホームタウンは鹿児島市とし、鹿児島県全域が活動範囲である。
鹿児島のスポーツ振興を目的に、宮原の寄付によって設立された財団法人SCK(Sports Community Kagoshima)のサッカーチームが現在九州リーグにて3位に着けており、SCKのサッカーチーム部分のみを分離継承させた株式会社を設立。5年以内にNリーグ参入を成し遂げる、と言う。
SCKは宮原の高校や中学の同級生を中心に結成されたチームであった。卒業後も真剣勝負を行いたいという友人達の要望を聞いた宮原が提供したものであり、結成9年を経過し、現在では鹿児島のトップチームの1つとなっている。
ホームスタジアムは県所有の鴨池運動公園陸上競技場を利用することで県と合意しており、鹿児島への投資としてサッカースタジアムを建設予定であると発言し、場内に驚きの声が響き渡った。
本日付けでSC鹿児島発足委員会を設立し、委員会には高校選手権優勝監督である松下や鹿児島県知事、鹿児島市長、鹿児島県サッカー協会長、その他有力企業の経営者らが名を連ね、鹿児島が一丸となって進める大型プロジェクトであることを宣言した。
10月までに当該委員会で組織構築のディテールを固め、その後選手のセレクションを行う。九州リーグ終了後に運営法人として『株式会社SCK』を設立し、移行手続きを行う予定とのことであった。
SC鹿児島は特に育成分野に注力していくことも宣言し、財団法人SCKと同じく宮原が所有する学校法人との連携を発表。
シャルケ時代に培ったドイツサッカー界での人脈を生かし、サッカー先進国の進んだ制度、技術の導入と還元を図るが、これはサッカー以外のスポーツでも試みることとなっており、その受け皿として学校法人を活用する。
宮原はSC鹿児島発足委員会の委員長としてクラブ設立活動業務を担いつつ、選手としてSCKに中途加入する予定である。
今後は残り僅かとなった九州リーグ、県予選を勝ち抜いた九州社会人サッカー選手権に参加することとなる。
SC鹿児島に関する発表は以上であったが、宮原は更に九州金融業界、小売業界の買収や再編構想も発表。SC鹿児島の設立記事は各紙のスポーツ面に限らず、経済や地方面にも載せられ、大きな注目を集めることとなった。
この日から始まった宮原の激動の日々は確実に日本サッカー界、日本スポーツ界を変えていくこととなる。
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