【11】 妹カップルの前で偽のカップルを演じる二人

【シチュエーション】 ・11

幼い妹カップルの前で性の手ほどきを説く二人


【舞台設定】

現代世界。エチカの部屋。


【二人の関係と親密度】

クラスメート。親しくはあるが、現段階では互いに恋愛感情は無い。


【個人データ】

・ハル──男、学生、10代。おっとり目な性格。

・エチカ──女、学生、10代。見栄っ張りな性格。


───────────────────

『 妹カップルの前で偽のカップルを演じる二人 』





 場所はエチカの部屋──ベッドの上に腰かけるハルの前には二人のカップルがいる。


 正座しては、痛いほどに真剣なまなざしを向けている二人を前に、ハルは「なぜこんなことになったのか?」と自問せずにはいられなかった。

 そんな、未だ現状を理解できていないハルをよそに……


「さぁ、あなた達! これから『恋人』の在り方って言うのを見せてあげるから、しっかり勉強するのよ」

『はい! よろしくお願いします!』


 腹話術人形よろしくにハルの膝に座ったエチカはそう二人に声掛けして、得意げに鼻を鳴ならした。


 いま目の前にいる二人はエチカの妹カップルである。

 事の始まりはこの若いカップルが互いの今後をエチカに相談したことから始まる。


 相思相愛であるところの二人ではあるが、純朴なこのカップルは『恋人の在り方』というものに迷いを抱いてしまった。

 ここでいう『在り方』とはキスやペッティングといったコミュニケーションのことで、今日日『天然記念物』並みに純朴な二人はその作法が分からずに行き詰まってしまったのだった。


 そしてその解決に頼った先こそが、誰でもないエチカであったという訳であり、さらにそんなエチカが頼ったのがハルであって話は現在につながる。


「よく見とけって……何するんだ、おい?」


 それでもこの場の空気を悪くしては申し訳ないと思い、ハルは小声でエチカに語り掛ける。

 両腿の上、体を横にして足を直交するように座ったエチカはチラリとハルを見上げる。


「恋人へするみたいに体を触ったりしてくれればいいのよ」


 自分達の関係が即席のものであることを知られてはマズいとばかりに窘めてくるエチカへため息も一つ。いつもこうだ……とハルは思わずにはいられない。

 事の始まりは『相談に乗ってほしい』と言われたことに始まる。


 エチカとは今の学校に通い始めてからの仲で、女を感じさせない気軽さもあってか二人は男友達のよう気さくに付き合う間柄であった。

 そのエチカから妹カップルが困っているから助けてくれと頼みこまれ、ハルも二つ返事で気楽に引き受けたのではあったが……


──想像以上にめんどくさい感じだぞ……


 ふたを開ければこれこの通り。理不尽な状況に置かれていた。


「とにかく何か始めてよ。テキトーに触っててくれれば、私もそれに合わせて演技するから」

「テキトーに触るって……本当に何したらいいんだよ?」

「そんなの知るわけないじゃない! とにかく指示していくから、まずは始めなさいよ」


 ひそひそ声で逆ギレされてなおさらにハルも切なくなる。


『どうしたのお姉ちゃん? 早く見せてよぉ』

「え゛!? あー、はいはい。でもね、恋人って言うのは始める前のトークも重要なのよ? こうやってお互いの気分を盛り上げるの。ねー、ダーリン♡」

「ダーリン? 誰?」

「もー、照れちゃってぇ。いつもみたく『ハニー』って呼びなさいよね!」

「ッ!? いーッ!」


 顔は笑顔にもかかわらず、妹達には見えない角度で腿をつねってくるその痛みにハルは声を上げた。

 そして促すよう、再び膝の上そこから恨めしい視線を投げかけてくるエチカにハルもため息。どうやら『何か』をしなければならないらしい。


──って言っても……どうしたらいいのかな?


 改めて考える。

 そもそも恋人同士のペッティングとは性交渉に至る前段階であるとハルは理解する。ならば『それに準じた体の触り方は?』と考えた時、


──AVみたく触ればいいのかな?


 ハルの答えは自然そこへと行きついた。

 エチカにも言えることではあるのだがそもそもこのハル自身、恋愛経験はおろか性体験すらないのだ。

 となれば彼が頼るべき女性への接し方──この場合のアンチョコは普段見ているAVくらいしかない。

 ならば、とハルも意を決すると改めてエチカに触れた。


「エチカ……俺の腕に背中を預けて」

「お、やっとその気になったわね? 早くしてちょうだい♪」


 エチカを左腕にもたらせてはリクライニングさせると、開けたエチカの胸元にハルは右掌を置いた。

 学校制服の表面を探るように撫でまわすと、まずは乳房を探す。……まだまだ発達途中のエチカの胸板はしばし弄らないと肉の隆起が分からないほどに頼りない。


 しかしながらまだブラを必要としていないことが幸いし、ほどなくハルの手は乳房の肉付きとその先端に鎮座する小さな突起の存在を探り当てる。

 被せる程度に宛がった掌を萎めるとエチカの乳房はすっかりその中に納まった。


──あった、オッパイはここだな? それじゃ揉んどくか……


「ん……あ、ハル……そんな、いきなりそこなの?」


さらに人差し指と中指の股で摘み取るように先の突起もまた締め上げる。

 そこからは数少ない性の知識を動員してエチカに愛撫を施していくハル。

 手の平を縮めては広げるを繰り返しながら、時に押し付けてこね回すという緩急に富んだ責めを展開していく。


「あッ……あ、ひぃん……んぅ!」


 自分の腕の中、施す愛撫のことごとくに反応するエチカを前に、


──あ……ちょっと面白いかも♪


 この段に至りハルにもまたスイッチが入ってしまった。

 小さくとも女体──それを弄る優越感は幼いハルの『男』を刺激するには十分であった。


──こんな茶番につき合わせた報いだ。少し懲らしめてやれ♪


「んあッ? あ、ああぁぁぁぁ………ッ!」


 そんなイタズラ心も手伝ってハルはさらに責めの手を強める。

 背に回していた左手も折り返して左乳房をワシ掴むと、残り右乳房はその先端を摘み、捻り上げ、さらには強く指先で穿ちと容赦なく責め立てた。


 エチカもまた抗うよう、愛撫を繰り出すハルの手の上に自分の掌も重ねては握りしめる。

やがて時折り痙攣しては反応していた体が小刻みに震えだし、一際強く身を硬直させるや──


 「あ、あ、あぁッ……あうぅ……!」


エチカからの抵抗の一切が消えた。

液体のように脱力してはハルに身を預けてきたのである。

 その様子にハルも我に返る。


「……エチカ?」


何か様子がおかしい──いぶかしんでのぞき込む腕の中には、


「ハル……ハルぅ………」


 眠たげに瞼を重くしては熱に浮かされたような視線を向けてくるエチカ。上気したそこにはつい先ほどまでの勝気で子供っぽかった表情は微塵として見られない。


「ゴメン、やり過ぎた……大丈夫か? 次は何するんだ?」

「はぁはぁ………」


 語り掛ける声に反応し、エチカはすがるよう胸に置かれたままのハルの手を握りしめる。

 やがて一塊の唾液を飲み下すと、


「………キスして」


 エチカはそう求めた。

 その要求に面くらったのはハルだ。

 さすがにその行為には抵抗があった。


 服越しに体に触るのとは違い、その行為はむき出しの粘膜の接触である。それに加え、『キス』に対する貞操観念はハルにも存在している。


「出来るわけないだろ……もっと他のことは?」

「はぁはぁ……もう分かんないよぉ……キスしたい………今は、ハルとキスしたいの」


 涙ぐみながらに見上げられると、まるで催眠術にでも掛けられたかのようハルの体は硬直する。それどころか見つめられるエチカの瞳には強く吸い寄せられるようですらあった。


──そんな……キスするのか? 俺達が? エチカの妹達だって見てるんだぞ?


 思い出したようにベッドの下へ視線を向ければ、


『おぉ、ついにキスするんですね!?』

そこには両手を地については身を乗り出して食い入る妹カップル。


「ハル……早くぅ」

『さぁ……早く!』


 それぞれに思惑の違う期待に挟まれて──ハルは今、完全に逃げ場を失ったのだった。



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