手鏡に跨る(三)
菊門まわりの汚ない
たとえば鼻毛は鼻腔に生い茂るものだ。耳毛も同様の
眉毛はその漢字があらわすごとく目のすこし上に生えている毛である。
いまから除こうとしている汚叢は眉毛寄りとなる。
糞が
たとえば肛毛に
ふりかえれば産道から
迭夜は三度瞬くあいだにすくと立ち上がり、いつも在宅時にまとっているよれたシャツや股引を捨てるように脱いだ。それから迭夜は髭をあてるときにしか使わない手鏡を持ち出した。まずは糞汁を撒き散らしている元凶を確かめたい。
浴槽部分をのぞけば半畳足らずの洗い場。人並みの背丈がある迭夜が蹲るには窮屈だった。苦しい体勢そのままで直下の鏡面を覗きこまねばならない。風呂場の白熱灯の明るさなどたかが知れている。いくら鏡面の奥に向かって目を凝らしたところで薄暗がりしか視えなかった。
おのれの肛門とは──世界の裏側である。寺町迭夜は、魔境に魅入られつつあった。
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