第5話

「今日は俺に付き合ってくれてありがとう」


私は顔を横に振った。


「わ、わたしこそありがとうございます」


慶吾君はなんで敬語って笑ってたけど誰かと一緒に居てこんなに楽しいなんて思ったの初めてなんだ。


「このバカ慶吾が」


おばあちゃんの家の前に着いた途端パチンと言う音と元気な女の人の声が響いた。


「いてぇ…姉貴頭叩くなよ、まじバカになる」


慶吾君は痛そうに座りこんだ。


「慶吾君大丈夫?」


私も一緒に座りこんで頭を触った。

なぜか慶吾君は顔を真っ赤にして下を向いていた。どうしたんだろう。


「結衣元気だった?」


女の人に腕を引っ張られ抱きしめられた。


あ、今日抱きしめられるの2回目だ。

この人慶吾君のお姉さんなんだよね?なんか雰囲気似てる。


「姉貴結衣困ってる」


慶吾君に私とお姉さんは引き剥がされた。


「あんた姉にも嫉妬するなんて心が狭いね」


「うるせぇ…」


慶吾君は顔を真っ赤にしながらお姉さんは大爆笑しながらただ私はそれを眺めていた。


嫉妬?なんで慶吾君が嫉妬なんて


「姉貴のこと覚えてないと思うよ」


私は申し訳ないと思ってコクっとうなづいた。


「え、もしかして5年前のあのことか原因かな?」


ん?5年前ってなに?


「5年前って私なにかあったんですか?」


「え…あ、いやごめん何でもないよ」


あきらかに様子がおかしい気がする。


「それよりあんた結衣連れまわして…

ばあちゃん心配してる」


あ、おばあちゃんなにも言わず出てきたんだった。


「あの慶吾君のこと怒らないでください。

慶吾君は私のことを思って連れ出してくれただけで」


えっとだからその…なんて言ったらいいのか分からない。


「結衣は昔から優しいね、このバカ庇って」


私はお姉さんに頭をくしゃくしゃにされた。


「姉貴そんなにバカバカ言うのやめろ」


「まああんたが一緒なら大丈夫だと思ってたけど」


「当たり前だろ、俺が結衣を守るって決めたんだから」


守る、誰かにそんな風に思われたのは初めてだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る