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 今日で今年度終了の日、今年は本当に色々あったと思う。義務教育という枠を飛び出して高校に入学しての初年だった。だから初めてのことばかりの一年間であったが、中身は濃いものだった。

 年度の始めの方は中学からのことを引っ張ってきていた。中学校よりも授業も休み時間もすべての面において真面目で知的な感じなのかな、と思っていたもののオフのときの幼稚さが想像の遥か何十倍とで正直中学校の方がモラル的な面も考えて良かったのではないかとまで思ったくらいである。

 体育祭はペアダンを誘おうかな、と思っていたものの僕の勇気不足でそういうことには至らずやることなく見ているだけみたいな感じであったが、予想以上に面白かったのかなと思う。

 夏休みに入る本当に少し前に二時間にも及ぶLINEを経て破局という話で決着がついた。このときすぐには悲しみ、といったものがあったもののしばらくしてから言われた言葉の鋭利な部分に向き合って心を深くエグった。僕の中ではこの言葉に相当な傷をつけられたのである。もうすぐに忘れたいという思いがあった。

 そして夏休み、セミナーAとBで生物と化学に触れてセミナーBの化学、分野としては有機化学によってその前よりもより一層化学というものに興味を持って日常に必要不可欠なものとなったのである。

 文化祭では部活での公開実験があって結構あたふたがあったけれども楽しく終わらせられたのではないかと思っている。また一度だけシフトのところを抜けて吹奏楽部の演奏を見に行った。この辺りから既に陽向への思いが少なくともあった。クラスの模擬店も上手く行ったのではないかと思っている。

 十月の終わりの遠足では陽向や奈江などと同じ班で悪天候のなかではあったもののそれなりには楽しめたと僕は思っている。陽向と同じ班になったというのはこの日を楽しみにさせる要因として完全にあった。

 大体年を越す前まで気にしていたことになるがクラスでの男子からの対応、反応といったものが他の人よりも冷たいと感じていた。六月にお前のことが嫌いだから話しかけないでとまで言われたことがあったのでこの影響は大きいものと考えられる。だから学校に行きたいという思いが薄くなってきていて朝起きる度に憂鬱な気持ちを催していた。こういうところからも中学校との比較をしてやっぱり中学校の方が良かったと思った。

 そして新年、元旦から陽向に攻めていって六日の朝に無事に恋人になった。ここまでの間に僕の素、みたいなものを見せていて色々話を聞いてもらったりもしていた。だからそこで何かが大きく変わるということはないがここから今までよりも距離が近くなったというのがある。

 ここまでのおよそ三ヶ月間、どんどん普段からの距離感が近くなっていった。二人のときには僕が今までやったことがなかったようなことも恋人同士、ということでやった。ハグをしたり手を繋いだりキスをしたりそういったことである。

 陽向のお陰でこの一年間、特にここ三ヶ月は苦しいときも何とか学校に行けたし学校を楽しい場所にさせてくれた。

 年度の最後の一ヶ月は世界中に蔓延した新型コロナウイルスの影響で学校が臨時休校になってしまったために家でひたすら過ごすという時が続いた。年度の最初の方は学校に行きたいという思いがなくなっていたがこの頃には陽向に会うため、というのが一番大きかったとは思うが学校への登校を希望していたくらいである。

 一年を通して“人”というものを深く感じた。寄り添ってくれる“人”、距離を置かれて関わろうと思わなかった“人”、モラルがない“人”、本当に色々な“人”を感じた。人間は周りと一緒に生きているんだ、ということをこの一年間はずっしり思わせるそんな一年であったと思う。

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