第1学年

1

 鮮やかな色をした桜が満開であるように僕の心の中にも満開の桜が咲いていた。そう、今日は新たな道を進む第一歩を踏み出す入学式の日なのだ。合格発表の日から胸に秘めていたワクワク感が狭い檻から解放され、身体の至る所に遊びに行っている。

 登校してみると門とは違ったところに長い列が出来ていた。何の列なのかと列の先頭の方へ行ってみると、「鬨俵高校 入学式」と書かれた板が立てかけられていた。板の前で写真を撮ろうとしている人の列であったのだ。親との話し合いにより列に並んで写真を撮ろうということになった。あと十分程度で受付を済ませて整列しなければならない。さすがにそこまでには撮り終えられるだろうと高をくくって並んだが、時間になってもなお撮れる状況には至らなかった。入学式は新体育館で行われるのだが、クラスの発表は旧体育館の壁に掲示されていた。鬨俵高校はクラス名は番号ではなく、AからIまでのアルファベットであった。掲示されていた名前を見ると一番下ではなく、下から二番目に書かれており辿って上の方を見るとそこにはGというクラス名が書かれていた。自分の名前の下に書かれていた名前はおから始まる名前でどういう理由でそのに名前があるのかよく分からなかった。新体育館に入ってみるとクラスごとに座席が決まっており、左から出席番号が若い順に座っていた。出席番号が後ろであるために右側に歩いていくと一番右側の席に紙が貼られていてG組の列には39と書かれていた。座る出席番号が書かれていると判断した僕は一番右側に座ってみた。数分して教職員の席に座っている一人の男性の先生が近づいてきた。その先生は受験の時に試験監督だった先生であった。近づいてきたその先生は

「若船謙昭君?もう一つ隣だよ、席。」

と言って自らの席に戻っていった。僕はもしかしたらこの先生が担任になるのかもしれない、と思った。

 式の内容は思った以上に少なく、式次第には九つの項目しかなかった。式が始まって早々に司会の先生から「起立」という号令がかかった。小学校、中学校の経験的にはここのタイミングで起立することはほぼない。するとさらに驚く号令がかかった。ステージの上に上がった先生が自ら礼をするのではなく、司会の先生が「礼」と言ったのだ。小・中学校での今までは先生の礼を生徒たちが合わせて礼をするという形だったためやりにくさを感じた。その後に行われた入学許可では各クラスの担任と思われる教師たちがクラスの生徒の名前を個名した。先ほどの声を掛けてくれた先生はG組の個名を行った。やはりこの先生が担任なのだろう。式の後ろの方にある新入生代表の言葉ではその代表の生徒の人が自ら礼をしてそれに合わせる形で生徒たちは礼をしたのがとてもおもしろかった。式の後にあった一学年の担当紹介で入学許可の時に思った通り担任は式が始まる前に声を掛けた先生が担任だった。名前は中学校の時の音楽の先生と同じ名前だった。H組の担任の名前が好きなアニメのキャラクターの偽名と一緒であったことが今日一番テンションを上げた理由であった。その後教室に戻ると、出席番号が後ろから二番目という理由が分かった。一人留年の先輩がいるとのことだったからだ。ただその人はあまり来ないとのことだったので、実質三十九人で一年G組を作っているとのことだった。やはり出席番号が一番後ろなのは避けられないことなのだろう。担任の先生の自己紹介を受け、提出物を出して話を少しされて終わった。下駄箱を探そうと玄関に行ってみたが唯一G組だけが紙で表示がなく困っていたが、同じクラスの女子に話しかけられ見つけられない仲間であり、その人が先生に聞いたのでそれについて行ってなんとか場所はわかった。その後親を待つ間に玄関の前にいると吹奏楽部の女子の先輩三人から声を掛けられて

「部活決まってますか。決まってないなら吹部はどうですか。毎年バレンタインたくさんもらえますよ。男子の先輩も良い人ばかりですよ。」

と勧誘された。バレンタインは雨海純ウカイジュンからもらえれば十分だなって本心では思った。少し経ってから今度は水泳部の女子の先輩が二人近づいてきた。

「部活決まってますか。決まってないなら水泳部はどうですか。男女仲良いですし。」

個人的には水泳部は違うかなって思っていたので苦笑いくらいで済ませていた。部活もゆっくり考えないといけないな、と思った。初日から慌ただしい日であったとつくづく思った。

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