ごまかし作戦
そうこうしてるうちにも、少しずつ足音が近づいてくる。やばい、見つかったらどうしよう……!
「紡ちゃん! ちょっとクローゼットに隠れてて!」
『ふぇっ!? わ、わかりました!』
紡を慌ててクローゼットに押し込み、ソフトのウィンドウを最小化すると、動画サイトを開いて再生途中の動画をクリックし、一時停止するという偽装工作をした。
少しして、お母さんが私の部屋のドアを開けた。
「未来ー? ちょっと、パソコンのシステムおかしくなっちゃったから見てくれないかしら?」
「ん、わかったー。さっきはびっくりさせてごめんね! 動画見て変な叫び声あげちゃった。すぐ行くね!」
「あらそう。あまり長い時間見ないのよ!」
そう言って、お母さんは部屋を出ていった。
「はあー……、何とかごまかせた……」
『大丈夫でした?』
「うん、何とか。ちょっとお母さんのパソコン見てくるから、もう少し隠れてて」
『かしこまりました!』
私は部屋を出ると、リビングに行った。パソコンのモニターを見ると、待機中のサインが出たまま動かなくなっている。
「仕事してたら、急にフリーズしちゃって……何とかなるかしら?」
「どれどれ……お母さん、タブ開けすぎでしょ。こんだけ負荷をかけてたら固まるって。とりあえず、音楽はミュージックプレーヤーで聴いて、資料は別の端末を使えば何とかなるはず。ほら」
パソコンの画面を整理したおかげで固まっていたシステムがまた動き出した。
「よかった。仕事中のデータが消えたらどうしようかと思ったわ。今日のご飯はカレーにしたからね」
「わかったー。あまり働き詰めないでよ」
私はそう言ってリビングから自分の部屋に戻った。
「ごめんごめん、お待たせ!」
『いえいえ、大丈夫ですよ! でもこの調子だと、未来さんの御家族に私の存在がバレてしまうのも、時間の問題ですね……』
「う、確かに……」
お母さんやお父さん、弟の翼に紡の存在がバレたら、一体何を言われるか分からない。かといって、紡をずっとクローゼットに押し込めて生活させるのも可哀想な気がする。
私はいきなりやってきた危機に頭を悩ませた。勢いで紡をお迎えしちゃったのがまずかったかな……
悶々としていると、紡が立ち上がって部屋から出ようとした。
「紡ちゃん!? 出たらダメだって!」
『いえ、私はずっと隠れているより、ちゃんと話し合いした方がいいと思うんです。未来さんも、そう思いませんか?』
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