慣れないシステム
『えへへ、びっくりしました? 私はこんな形で、ユーザーと対話をしながら曲作りをできるシステムになっているんです』
「そ、そうなんだ……びっくりして変な声あげちゃったよ」
『最初は誰だってびっくりしますよ! 私の体はホログラムで出来ていますが、投影機に車輪が着いていて動けますし、ユーザーと握手や、ハイタッチなど軽く触れ合うこともできるんです』
私は恐る恐る、紡に手を差し出し、そっと握ってみた。確かに、少々無機質っぽい感じはするものの、ちゃんと握った感触がある。
「ほ、本当だ!」
『うふふ、わかっていただけたなら嬉しいです。未来さん、これからよろしくお願いします!』
「紡ちゃん、こちらこそよろしくね」
『はい!さっそくですが、私のシステムの説明をします。そちらのパソコンに歌詞を入れると、私が曲に仕立てて歌う、というのが大まかなシステムです。ポップス、ロック、バラード、演歌など、ジャンルを指定すると曲の雰囲気も大分変わってきますよ!』
「なるほど……」
私はパソコンのディスプレイ内でチカチカと点滅しているカーソルを眺めた。急に歌詞を入れると曲に仕立てて歌うと言われても、歌詞が思い浮かばない。
『どうしました?』
「いや、テストしてみたいけどちょっと曲にする歌詞が思い浮かばないんだよね……」
『それなら、テスト用に説明書に童謡の歌詞が入っています! 試しに入れてみてください』
説明書をぱらぱらめくると、確かに童謡の歌詞が書いてある。
『うーん……これでいいかな。アルプス一万尺』
書かれた歌詞を見ながらキーボードを打ち、ジャンル指定を《既存曲》に切り替えた。
『そしたら次は再生ボタンをクリックしてみてください!』
「わかった!」
彼女に言われるがまま、カーソルを《再生》の位置まで動かし、ボタンをクリックした。すると……
『~♪』
透き通った可愛らしい歌声で、紡が歌いだした。既存曲とはいえども、その歌声にはやはり人を魅了する何かがあると私は直感した。
「ひゃー、すごいなぁ! 本当に歌ってくれた!」
『こんな感じのシステムになっているんです! 面白いでしょう?』
「うん、すっごく! また歌詞ができたら歌ってほしいな!」
『はい、もちろんです!』
お互い笑顔で話していた、その時だった。
「ちょっと未来ー、翼から『お姉ちゃんの変な声を聞いた』って言われたんだけど、あんた大丈夫なの?」
下から聞こえる、お母さんの声。やばい、紡の存在が知られたらどうしよう!?
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