初期設定、目覚めの時
家に帰り、電子スクーターを止めるとドアを開けて中に入った。
「ただいまぁー」
「未来、おかえりー。遅かったじゃない」
「ちょっと電子教科書の画面割っちゃって、詩音のお店で直してもらったの。あと電球切れたって言ってたから買ってきたよー」
「あらまあ、ありがとう! おやつは冷蔵庫の中よ。課題早めに済ませなさいねー」
「分かってますって!」
自分の部屋に入り、制服を着替えてクローゼットにしまい、課題をするために電子教科書とスタイラスペンの電源をつけた。
「えっと、この数式は確かこれを代入すれば……」
ぶつぶつ言いながら、何とか課題を終わらせる。教材を鞄にしまうと、お店の袋からソフトの箱を取り出した。
「とりあえず開けてみるか」
外側のフィルムを破り、箱のテープを丁寧に剥がして蓋を開けた。中には説明書とインストール用のCD-ROM、そして何故かホログラムの投影機が入っていた。
「なんだこれ……どうしてホログラムの投影機が入っているんだろ。まぁいいや、とりあえず始めてみるか」
自分のパソコンの電源をつけ、ディスクの挿入口に先程のCD-ROMを入れる。
《バーチャルシンガーソフト『言ノ葉紡』インストールシマスカ?》
画面の表紙を見て、《はい》をクリック。画面の表示が《インストール中……》に切り替わった。
程なくインストールは終わり、初期設定に進む。
「えっと…名前は登坂未来、年齢は14、呼ばれ方?うーん適当でいいや…」
必要事項を全部入力し、エンターキーを押す。
《初期設定ガ完了シマシタ。ホログラム投影機ヲ床ノ上二置イテクダサイ》
「これかな……?」
先程箱から取り出したホログラム投影機の外のビニールを破り、上下を確認して床に置いた。そして画面を見る。
《準備ガ全テ完了シマシタ。コレヨリ、バーチャルシンガーソフト『言ノ葉紡』ノ、プログラムヲ開始シマス》
《OK》のボタンをクリックすると、投影機が音をたて始めた。
「……?」
そして、ホログラムが私の部屋の中に投影され、パッケージに描かれていた女の子が姿を現した。
『未来さんはじめまして! バーチャルシンガー、言ノ葉紡です! よろしくお願いします♪』
「うわぁぁぁぁ!?」
目の前で起きた光景に私は思わず椅子から転げ落ちて尻もちをついた。自分の部屋にホログラムでできたバーチャルシンガーの女の子が存在している、その事が私を驚かせた。
慌てて説明書を読むと、『ホログラム投影された言ノ葉紡が、あなたの曲作りを全力でサポートします』と書かれている。今まで触った事なんてなかったから知らなかったけど、まさかこんなの、ありだとは思わなかった……
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