バーチャルシンガー……?
昼休み。読みにくくなってしまった電子教科書で何とか授業を乗り越え、私は詩音と約束していた通り購買に行った。
詩音が購買のお弁当を選んでいる間、私は棚からジュースを取り出し、先にお会計を済ませた。
「未来、お待たせ!教室戻ろっか」
教室までの廊下を歩く間、私たちは趣味の話を色々した。
「未来は最近暇な時何してるの?」
「うーん……大体はゲームしたり、デジタルで絵を描いたりするかな。詩音は?」
「うち? よくお父さんとお母さんのお店を手伝ったり、機械いじりをしたり、あとは……バーチャルシンガーの歌を聴くことかな」
「バーチャルシンガー……?」
ぼけっとしていたら、廊下を掃除していたロボットにぶつかった。
「いてっ!」
『未来サン、周囲ニハ気ヲツケテクダサイ。怪我ノオソレガアリマス』
「ご、ごめんなさい!」
教室に戻ってお弁当を食べながら、私は詩音の話を聞いた。
「バーチャルシンガーってのはね、音声合成ソフトの一種なの。歌詞を考えてソフトに入力すると、パッケージに描かれた子が歌って、曲にしてくれるという仕組み」
「それって、すごい初期の初音ミクみたいな感じなの……?」
「まあ、そんなもんかな。でも大体50年前のソフトは歌詞の他に音の高低とか長さとかを入れなきゃいけなかったから今のより正直めんどくさい感じ。今のバーチャルシンガーは歌詞を入れるだけで曲に仕立ててくれるんだよ」
「何それ、めっちゃハイテク……」
「AIがいるような時代に何言ってんの(笑)」
間の抜けたことを言ったら詩音に笑われた。彼女の話を聞いて、私はバーチャルシンガーに興味が湧いてきた。
「詩音、そのバーチャルシンガーのソフトって大体いくらぐらいするの?」
「うーん、ものによってピンキリかな。型落ちだったら比較的安く手に入るけど、最新モデルだと、何万もしちゃうものもある。到底うちらのお小遣いだけでは買えないね」
「そんなに……!?」
「そう。もしバーチャルシンガーのソフトが欲しくなったら、いつでも相談に乗るね。色々探してあげるよ」
「ありがとう、やっぱり詩音頼れる!で、もし私が曲作りを始めたら、1つ約束してほしいの」
「何?」
「クラスのパリピ達に、曲作りをしていることは話さないで。何言われるかわからないから……!」
「はいはい、わかってますって。未来に意地悪するような人の壊れた電化製品は、うちでは修理しないから!」
おしゃべりをしているうち、5限が始まる5分前のチャイムが鳴った。私は食べ終わったお弁当を片付け、次の授業の準備を始めた。
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