どうしてこうもついてない

「おはよ~……」

「あっ、未来おは……ってどうしたの!?」

どんよりとしたテンションで教室に入った私をみて、親友の詩音は驚きの声をあげた。

「うぅ、実は寝坊して急いで学校に行ったら生け垣に突っ込んだ上に集会の日にちを勘違いしてたよ…」

「あらーそれはお気の毒…」

彼女が憐れむのもわかるだろう。私は昔から人の不運を引き受けているのかというくらい、ついてないことが他の人より起こりやすい体質なのだ。目の前で欲しかった雑誌が売り切れる、レストランの店員さんのミスで頼んだ料理と違った物が出てくる、教室を掃除していると雑巾を踏んづけて派手に転ぶ……など、挙げたらきりがない。

「ねえ未来、今日のお昼一緒に購買行かない? うちのお母さんがお弁当作り忘れちゃって」

「いいよー! ついて行ってあげる」

「やったー未来ありがとー!」

体質のせいで深いつきあいの友達が少ない中、こういった詩音みたいな友達は私にとってなかなか貴重だ。まるで私に起こる不運を帳消しとまではいかないけど軽くしてくれる、そんな存在だ。

早く昼休みにならないかな、と思いながら鞄の中をごそごそと探って電子教科書を出した瞬間、私は血の気が引くのを感じた。

「嘘……」

「ん? 未来、どうかした?」

「電子教科書の画面が……割れてる……!!」

「ええぇぇぇぇ!?!?」

生け垣に突っ込んだ時に落としたのだろう、私の電子教科書の画面は右半分が蜘蛛の巣状にひび割れ、文字が読みにくくなってしまっていた。

「うわぁぁ詩音どうしよう……!!」

「未来落ち着いて! それだったら、うちの電気屋で直せるから! 帰りに寄って行きなよ」

「うぅ……詩音、本当に毎度毎度ごめんねぇ……」

ヒビが入った画面を指でなぞりながら、私は深くため息をついた。もうヤダ、こんな体質……

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