第11話 迎えに来たよ
「あ、ありがとう……あ、こないだ顔……叩いちゃってごめんね。大丈夫……?」
楓夏はそう言いながら春哉の頬に手を伸ばした。
「だっ……大丈夫! 僕の方こそ……だ、抱きしめたりしてごめんね……」
春哉は、楓夏の手が春哉の頬に触れる寸前で楓夏の手を取り止めた。
「あ、ごめんね。つい昔の癖で……」
春哉に手を握られ、咄嗟に引っ込めた。
「……ほんとに、ふうちゃんだ。昔、僕が転んで怪我した時よく、ふうちゃんが手当てしてくれたね」
「うん! よく泣いてね。それで私が慰めてたね」
楓夏は昔より遥かに背が高くなった春哉の頭に手を伸ばした。
背伸びをしぎりぎり手が頭に届き、ポンポンとした。
「大きくなったね。昔は私の方が高かったのに」
と続けた。
「僕もう、転んでも泣かないよ。昔はふうちゃんに守って貰ってたけど……今度は僕が、守るからね」
春哉は楓夏の右手に自分の左手を重ねた。
「あ……そうだよね。昔とは違う……うわっ!」
「だ、大丈夫?」
手が重なり驚いたのか、楓夏はバランスを崩し倒れそうになった。
春哉はそれを受け止め……思わず抱きしめた。
「……ごめん、大丈夫?」
抱きしめた楓夏の肩に手を置き引き離した春哉。
「……うん、大丈夫。ありがとう」
そんな2人の頬は赤く染まっていた。
「……でもね、ふうちゃん。全部が昔と違うわけじゃないよ」
「全部じゃ……ない?」
「うん。昔した約束覚えてるかな? 僕は覚えてるよ」
「約束……あ、引越し……」
「あ、ごめん! 言わないで!」
約束の話をしようとした楓夏の言葉を春哉は遮った。
「ごめんね……」
春哉は首を左右に振り否定すると続けた。
「……ふうちゃん。迎えにきたよ。僕……ふうちゃんが好きです。付き合ってください!」
春哉は頭を下げ、右手を楓夏に差し出した。
「……は、春くん。迎えに来てくれて、ありがとう。わ、私も春くんが好きです。よろしくお願いします!」
楓夏は春哉の手を握った。
「よろしくね」
頭を上げた春哉はニッと笑い、握っている手に少し力を入れたのだった。
迎えに来たよ 織山青沙 @korotibi23
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