第10話 謝罪


 ***



 楓夏に話しかけるのをやめて、十日程たったある日のこと。


「(ふうちゃん、今日もかわいいな……。話しかけないように、頑張ろう……)」


 登校し席に着くなり、楓夏を一瞬見つめるとすぐに視線を逸らした。


「……あ、あの……」


「……え? ぼ、僕?」


 隣の席に座る楓夏から話しかけられた春哉。


 自分が話しかけられたのが信じられなかったようだ。


 周りをキョロキョロし、楓夏に問いかけた。


「……う、うん」


「ど、どうしたの?」


 嬉しさと信じられない気持ちが入り交じり、楓夏を見ることが出来ない春哉であった。


「き、今日のほ、放課後……時間ありますか?」


「今日は大丈夫だよ」


「……よかった。ありがとうございます」


 安心したのか、楓夏はふふっと微笑んだ。


 そんな楓夏を見た春哉の頬は赤く染まっていた。


 ──そして放課後。


 他の生徒は下校、または部活に行き教室には楓夏と春哉だけだ。


「あ、えっと……ごめんなさい!」


 隣の席に座る幼馴染が意味もわからず謝罪し頭を下げた。


 春哉はとても困惑していた。


「えっと……とりあえず頭あげて。ぼ、僕なんで謝られたの?」


「ほ、本当は……は、春くんのこと覚えて……た」


 楓夏は俯きぼそぼそと話し始めた。


「え、え? 本当に覚えててくれたの?」


「……うん、嘘ついてごめんね」


「全然! 僕忘れられたのかと思ってすごいショックだったんだ……。

 けど、覚えててくれたならいいよ! ありがとう!」


 春哉はニッと笑って見せた。


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