3, 部室


昼休みを告げるチャイムが鳴った。


1年前の事件の妄想をキッカケに、4人で昼休みに語り合う機会が増えた。だが教室で話をするには目立ち過ぎ、場所を変えようと考えていた時、ちづるが生徒会と先生に掛け合い空いている部室を借りられるよう交渉してくれた。

入学したての1年生が、いったいどんな手を使って部室を手に入れたのか…何度聞いても ちづるは微笑むだけで教えてくれない。

しかし、そのおかげで私達の居場所が確保できた事には感謝だ。


そんなことを思い出しながら、いつものように購買でお昼を買い部室へ向かう。


「お待たせ♡」

部室の扉を開けると、3人の姿と、机の上に新聞が広げられている。何やらすでに今日のお題は決まっているようだ。


買って来たメロンパンを机の上に置いて「いただきます」と手を合わせると、隣に座るちづるが自分のお弁当の蓋におかずをいくつかのせて、


「少しはバランス良く食べなさい。多めにお弁当詰めてもらったから、私のおかず、わけてあげるわよ。」


と、お姉ちゃん、いやお母さんのように差し出してくれた。


「ところでさきちゃん、放課後ひまー?」


唐突に切り込んでくる龍野たっちゃん。大盛りの親子丼弁当をすでに半分食べ、プラプラとさせていたスプーンを ある新聞記事に向け


「今俺らで話してたんだけど、今朝の新聞に載ってるこの事故現場、割と近くなんだよねー。だからさ放課後行ってみないかって思ってさぁ。」


金髪にピアス、つり目の龍野たっちゃんは笑うと八重歯が出る。本人には言えないが、個人的には人懐っこい子犬のように思える。


龍野たつのの目的は現場近くにあるトワーレコードじゃないのか?」


龍野たっちゃんとは対照的に あまり表情を変えない和一いっちゃんが、片手に本を、もう一方の手に栄養ゼリーを握り、目線だけ龍野たっちゃんに送っている。

龍野たっちゃんは図星のようでペロっと舌を出した。


「放課後大丈夫だよ。現場行ってみようよ!ついでにトワーレコードもね♪」


私が答えると、3人とも笑顔で応えた。

こうして放課後再び集まり、死亡事故が起こった建設中のビルへ行くことになった。


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