2, 始まり
–––––1年前–––––
ケータイをいじりながら話をしていると、ニュース速報の通知が届いた。
「
他県での出来事だが、この数日間小学5年生の女の子が登校中行方不明になったとメディアが騒いでいた。新情報が出るたびに、ネットニュースの速報でも知らされるようになっていた。
「容疑者は…、近所に住み、自身の子供も女子児童と同じ学校に通う保護者⁈だって!しかも、凶器を用意していた…って、自分の子供と同じくらいの子を殺そうとしてたってことかな⁈」
半ば興奮気味にケータイと
「子ども同士のケンカに首突っ込んだ系か、ロリコン系と推測する。」
表情を変えずにまた本へと視線を下ろす。
私は少し考えたあと、立ち上がり、
「そんなありきたりな動機じゃなくてさ、もっとこう、感情の深いところでの妬みとか〜…。たとえば、運動会のリレーのアンカーとか学芸会の主役とかを自分の娘がやるはずだったものをその子に取られたり、成績でも自分の娘が勝てない事を自分の過去とリンクさせちゃって、劣等感から『あいつさえいなければ』という思いで犯行に及んだ、とか!きっと職場環境とか夫婦間の仲も良いものではなくて、そのストレスもあったのかも…」
宙を見ながら1人でふむふむと頷きながら熱弁している所に、廊下から声がかかった。
「犯行とか夫婦間の仲とか、なんの話してんのー?」
軽い口調の声の主は
「
私と
2人に事件の速報がきた事と、私の推理とは言えない妄想話をすると、
ちづるはと言うと、「そうねぇ…」と少し間を置いて真剣な顔になり
「誘拐された子は、実は犯人の昔の愛人の子どもである事が分かって、その元愛人から妻や学校にバラされると脅されて恐れて犯行に及んだ…のかしら」
最後は笑顔で締めくくるちづる。
一瞬の沈黙のあと、感嘆の声があがる。
私が何か悪影響を与えているような言い方が気になるが、それはそれとして、私はちづるの見た目からは想像できない発言に感激していた。
端整な顔立ちで、お嬢様のような立ち居振る舞いをするちづるが、こんな妄想をしてくれるとは!
「ち〜づ〜る〜!!!」
叫びつつ、ちづるの柔らかい胸へ飛び込む。
自信に満ち溢れた笑顔でちづるは、長い髪をサラリと揺らし私を受けとめた。
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