第14話 愛猫とパーティーを結成する決意をする
「ところで…バジリスク討伐完了を冒険者のみなさんにお知らせするのだけど、サチさんが達成された事は公表して大丈夫?
強豪パーティーに引く手あまただと思うけれど」
胸に抱く福は、甘えて何故だか幸歌の脇に頭を突っ込んでくる。
その動きに合わせて落とさないよう抱き方を変えていると、ベロニアがそう確認してきた。
「普通隠される方はいらっしゃいませんが、サチさんは登録されたばかりですし、まだお若いので私は少し不安です。
ムリヤリの勧誘や、報酬目当てのよからぬ輩もいるかもしれません」
ベロニアはまるで先輩か姉のように親身に幸歌を案じて忠告してくれる。
「秘密にする事ってできるんですか?
私初心者ですし、いきなり強いパーティーは不安です。
ベロニアさんが心配してくださってる事に、完全に対応できる自信も正直ないです」
福はなおも自分を誉めろ、可愛がれ、とばかりに幸歌の脇にぐりぐりと頭を押し付けている。
だが、正直もう腕がツライ。
福は普通の猫の大きさでも、7kgあるのだ。
「わかりました。
そのように対処します。
お任せ下さい」
ベロニアはにっこりと請け負ってくれる。
不安定な抱き方になってきた事を感じた福が、身を捩って幸歌の腕から飛び降りた。
「パーティーメンバー募集はギルド内で声をかける事もあれば、掲示板で募集される事もあります。
サチさんに合うような、そこそこ実力があって、雰囲気の良いパーティーの募集はあったかしら…?」
調べましょうか?
と続けそうなベロニアに、幸歌は慌てて待ったをかける。
「いえ、そこまでお手数はおかけできません!」
「手数だなんて!
本当に感謝しているし、それに…あなた達には苦労して欲しくないって思ってしまうのよ」
ベロニアは幸歌の顔を見、ついで受付台で今は視界に入らないだろうが、下に降りた福がいるだろう辺りに視線を向けた。
気配を感じたのか、福がにゃーと鳴く。
「ありがとうございます!
ベロニアさんには本当に感謝してます。
でも私は自分で探して、自分のパーティーを作りたいんです」
これは本心からの想いだった。
既にできてるパーティーなら実績もあり、安心できるかもしれない。
だがそれよりも、後から加えてもらうより、自分のパーティーメンバーを探して、自分だけのパーティーを作ってみたかったのだ。
それに、既に冒険に慣れたパーティーではなく…正真正銘の初心者の自分は、初心者向けの冒険でちゃんと実力をつけていきたい。
福頼みだけではなく。
それから…
「僕のお眼鏡にかなわないとダメだよ」
偉そうに宣言する福。
そう、福は人の好き嫌いがかなり激しいのだ。
「そういうわけなので…お気持ちだけ。
ありがとうございます」
「そう…わかったわ。
何かあったら何でも相談してね?
冒険とは関係ない事でも構わないから」
実力と人格のある冒険者から特に頼りにされている、やり手受付嬢であるベロニアがここまで言うのは極めて稀な事だったが、幸歌は知らない。
純粋に感謝して頭を下げる。
「はい、ありがとうございます、ベロニアさん!
あ、じゃあ1つだけお聞きしてもいいですか?」
「何かしら?」
「福と一緒でも泊まれる、オススメの宿屋をご存知でしたら教えて下さい!」
ベロニアはふふふ、と笑い、
「冒険者ギルドの受付嬢は情報通なのよ」
と、冒険者に評判の良い宿屋を教えてくれたのだった。
お礼とまたお世話になります、とお願いして、もちろんよ、と微笑むベロニアに別れを告げる。
幸歌が受付を離れると、ベロニアは別の受付嬢の元に向かう。
何かを耳打ちすると、その若い受付嬢は1つ頷くと、大声を上げた。
「バジリスクが討伐されたとの連絡がありました!」
おおお、と歓声が上がる。
ついで、
これで冒険にいける!
流石騎士団長!
の声に継ぎ、掲示板に張ってあった依頼書を持った冒険者が受付に殺到して行くのが見えた。
ベロニアも自席に戻り、その対応に忙しそうだ。
この混乱状態に陥る前に、きちんと自分の対応をしてくれていたのだと改めて感謝する幸歌だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます