第10話 愛猫と冒険者ギルドに着く
幸歌のよく愛読していた冒険物では、ギルドというより、酒場が依頼人から依頼を聞き、怪しくないか裏取りをし、そこにたむろする冒険者が依頼を受ける、というものが多かった。
だから予想外だった。
冒険者ギルドの大きさは。
大通りの店々に目を奪われていて、急に開けた場所に出たのも気づいていなければ、威風堂々と佇むギルドの立派さにも気づくのが遅れた。
口を開けて3階建ての建造物を見上げる。
「騎士団長様がご就任なさってから、大きな街にはこうしたギルドが設立されたのですよ」
まるで我が事のように誇らしげに兵士が説明を始めてくれる。
「いきなり冒険に出るのは危険だからと、無料の教育機関まで作られて。
あの方は本当に凄い方です!」
役職に様までつける心酔ぶりの兵士さんは、福に怯えていた時が嘘のように熱弁している。
「じゃあ私もその教育を受けられるんですか?」
ふと疑問と期待に問えば、兵士は首を傾げた。
「さあ…あなたは既に依頼を達成されていますし、魔獣使いの指導者なんて聞いた事がないです」
福に対する恐怖を思い出したのか、その視線は恐々とお利口さんに座って待っている福に注がれる。
絶対わざとだろう、大あくびをして鋭い牙を見せつける福を、幸歌はあえて無視する。
「そうですか…魔法とか勉強してみたかったので残念です」
「それでしたら機会はあるかもしれませんよ。
とりあえず連絡が既に行っているはずなので入りましょうか」
兵士は荒くれ者もいるだろう冒険者に備えてか、分厚い扉を押し開けて幸歌に中に入るよう促す。
僅かに緊張を覚えながら、幸歌はその扉を潜った。
ギルドの中は大変な喧騒に包まれていた。
依頼が張り出されているのだろう、掲示板に群がる人々。
受付のお姉さんにしきりに何か大声で話しかけている大男。
その熱気に圧倒される。
「バジリスクが出た影響で皆さん冒険に出れず、いつもより人が多いんですよ、きっと。
騎士団長様がいらっしゃって、討伐間近という事で、実入りのいい依頼を探しにいらっしゃってる方も集中しているんだと思います」
気圧された幸歌を気づかってか、兵士が声をかけてくれる。
「では受付で冒険者登録の件と、バジリスク討伐報酬について相談してみましょうか」
不慣れである幸歌を察して、兵士は空いた受付へ優しく誘導してくれた。
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