第3話 愛猫がご飯を捕る

「ほ、本当に福なの…!?」

恐る恐る確認する幸歌に、巨大な獣は

「そうだって言ってるだろ」

とふう、息を吐く。


人間じみたそのため息のような仕草は、確かに見慣れた彼女の愛猫、福のもののように思える。

超!巨大だが!

自分が頬のモフモフ天国から地面にダイブして、側に福が立っているこの状況から考えるに、恐らくお腹に寝かせてくれていたのを、立ち上がって落とされたのだろう。

林か、森か、木々を背にそびえ立つ…と言えそうなほど、大きく太いおみ足で立つその姿は、雄々しくも、やはり愛らしさそのままだ。

こ、これが色々と心配なくしてもらった結果!?

呆然とする彼女を余所に、福は不意に後ろの木々の方…仮定、森を振り返った。


「ご飯!」


そう口にすると、あっという間に森の中に駆け入っていってしまう。


「ちょ、福ー?!」


叫ぶ幸歌は放置である。

後を追おうと立ち上がる。

森までもう少しという所まで近づいた時、がさがさという音が近づいてきた。


「福?」


ホッとしてそう声をかけた彼女の目に映ったのは、巨大で派手なトサカを持つ、爬虫類の頭だった。


「ひっ…!」


反射的に出そうになった悲鳴が、喉の奥でひきつれる。

緑の鱗に覆われた顔を引き裂くように開いた口から、垂れ落ちた紫色の長い舌を、ピチャッと涎が滴り落ちる。


危険!?

福は?!

どうすれば!?


おぞましさを感じると共に、パニックに陥りそうになる思考の中、それでも福の無事を確認しようと名前を呼ぼうと口を開きかけたその時。

現れた爬虫類に続き…それを口に咥えた愛猫の姿が目に飛び込んできた。


なーーーーーーー??!!!!


幸歌は声も出ず、福を呼ぼうと開きかけていた口をあんぐりと開いた。

福がこちらに近づいて来るにつれ、その爬虫類の姿が露になる。

彼の口にがっちりと咥えられた首から続く前肢、白い腹も長く、そこには複数の、やはり緑の鱗に覆われたがっしりとした足が生えている。

どうやら複数の足を持つ、巨大なトカゲのようであった。

トサカがあり、やたらとその色彩は派手であったが。


「ねーちゃん、トカゲ!!」


側まで戻ってきた福は、無邪気にそう幸歌に報告してきた。

その口からドサリ、とトカゲが落ち、その首と愛らしい福の口から、言葉と共に真っ赤な血がドバドバと滴り落ち、緑の草に覆われた地面と、白い彼の胸元を赤く染めた。


「ぎゃああああ!!!」


今度こそ幸歌は、盛大に悲鳴を上げた。

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