第2話 愛猫のモフモフを堪能する
右頬に感じるふわふわ、しっとり、さわさわとした感触。
まさにモフモフ、としか言い様のない、いつもの、だがいつまでも、永遠に飽きることはないだろうと思える至高の感触。
そう、愛猫、福の毛皮の肌触りだ。
無意識に更にすり寄りながら、幸歌はいつも通り、平日なら目覚ましがなるまで、休日なら福が去る、または自分がトイレを我慢できなくなるまで、その感触を堪能しようとする。
だがいつもと違う事にふと気づく。
いつもなら片腕は福の体の下、もう片手は彼の頭の下で枕になるか、その後ろ足の間に挟まれているはずなのだが、その重みなどが感じられない。
それどころか、どうやら珍しくフリーらしい両手を動かしてみると、そこにもモフモフとした至高の手触りが。
かなりリアルな感触だけど、まだ夢の中なのだろうか?
幸歌はそう考えつつ、いつも福と添い寝するため横向きに寝ている都合上、上側になっている左手で、モフモフをやわやわと揉みしだく。
このちょっと余った皮の感触、間違いなく福である、と彼女は思う。
あー幸せ…
「ねーちゃん、いい加減起きろ」
「あーでも今福の至高のモフモフが…」
ふいにかけられた声に、夢と判断している幸歌は、目を開けさえせずに応じる。
「いつまで僕の腹揉んでんのさ、いいから起きろ!」
「いたっ!!」
いきなり愛しいモフモフの感触がなくなったどころか、軽い衝撃が右頬を中心に彼女の上半身を襲った。
流石に低血圧で惰眠を愛する幸歌とは言え、目を開く。
まず目に入ったのは考えていたような自宅の布団ではなく、地面であった。
むき出しの土に、所々雑草が生えている、間違いない。
私、外で寝た…?
軽く悩みかけた所で、幸歌は意識を失う前の出来事を思い出した。
自分が猫を庇ってどうやら死んだらしく、その祖父である猫神様が異世界転生させてくれると言っていた事を。
そしてそれには愛猫、福も一緒のはずである事を。
「福…!」
幸歌は愛猫の姿を求め、がばりと身を起こした。
「何さ」
そこに即座にそう返され、反射的に彼女は視線を上げた。
そしてそこに見た、巨大な獣の姿を。
「っ!?」
思わず絶句する。
獣は、座っている彼女よりずっと大きい。
ライオンより二回りほど大きく、そして大柄だった。
猫科の獣になら食べられてもいい、とさえ考えてしまう、ケモノスキーの幸歌でも、いきなりの事に本能が危険を叫ぶ。
が。
「ふ、福…!?」
「当たり前じゃん」
お腹は魅惑の真っ白。
鼻から上、背中が茶縞のキジ白柄。
何より白い手足の片手、片足に靴下を履いたような特徴的なその模様。
それは正しく、彼女の愛する、今絶賛姿を探し中である愛猫であった。
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