第5話 かば?

「———ええっと・・・[ひがしくりつ]でしたっけ?」

「だから![地方]なんていらないですからっ!!!」

いったい私は何をしているのか。 こんな所でふざけている場合ではない。

家に帰らせてくれるのはいつになるのだろう・・・。


・・・もう我慢の限界だッ!!


「———ふざけないでよ!!」

「あら?決してふざけてはないのですよ♪」


   ■□■


もう死んだと思っていた私の目に、今は大自然が飛び込んでくる。

太陽や風はこんなにも心地が良かったのか。匂いまであったなんて。

思わず涙がこぼれそうに・・・なったが危なかった。

私の視界には、不思議な顔をした女性まで映っているのだ。

驚いてるのか、不安なのか、心配なのか、全部織り交ぜたような顔。

第一印象としては・・・


『大胆な格好』。 黒いなあっ、と。

(私より美人で反射的にムッとなったのはここだけの話。)


私の住んでる街は結構な都会と言っても良いくらいだった。

買いたいものならなんでも揃う。

こんな服———と言って良いのか分からない服じゃない服(?)

どこの店にも置いてなかったぞ・・・?


私は立ち上がった。よろめいたりもしてなかった。事故後なのにな。

そして深く息を吸ってこう尋ねた。


「あの!ここは何処なんですか!?助けて下さい!

 事故って起きてみたら病院でもない外で!しかも変な格好させられてるし!!

 どうなってるんですか!?ねえっ!!??」


・・・尋ねたというよりの方が適している。

女性は深くため息をついてから落ち着いた声で呟いた。

「昨日の噴火のせいかしら・・・?

 ———でもサンドスターもとっくに消えてるし。う〜っ・・・。」


ツッコミたいことだらけだった。

夢でもみてるのか?私ったら。

「とりあえず、自己紹介からね。私は[カバ]。力には自信がありますのよ?

で、ここ一帯が私の縄張り。うふふっ♪すごいでしょ?」


『アテテテテテッ!!』


「・・・珍しい返事ね。」

「あっ、ごめんなさい・・・あはは〜っ・・・。」

(うん。強めにやったけど、やっぱり夢じゃないや。)


   ■□■


体感かれこれ2時間、我ながら頑張ったと思う。

ついに私は勝った。小学生でも10分かかるかという単語をこの女性に

ついに叩き込ませた!!! 

安堵感と達成感に包まれた私からこぼれたのは・・・!


『———こんな遊びに付き合ってなんかいられないのっ!ああっもう!!!』

「・・・遊び?あ〜っ、なるほど!これが "ことばあそび" だったのね。

 聞いただけだったけど随分面白いものを知ってるのね〜♪」


もうどうでもよくなってきた。要は疲れた。

(あ〜。はいはい私の負けですごめんなさいねつまらない遊びでッ!!!)


もうどうなってしまうのか。 美しい景色を見つめていたはずのまなこには、

いつしか絶望も映り始めていた。

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